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 2007年5月15日 造顔マッサージ

 DVDのコピーを、いま終えた。タイトルもプリントした。中身は、「造顔マッサージ」である。コピー枚数4枚。

 話は日曜日にさかのぼる。
 夕方、息子夫婦がやってきた。この日は母の日。そのための来訪である。
 母の日といえども、夕食を作るのは、日頃の働きに感謝され、慰労されるはずの母。できたものを食べるのは、母に感謝するために我が家にやってきた子供、その連れ合い。なかなか不思議な光景であるが、ま、その母が、

 「いいのよ、いいのよ」

 と嬉しそうに子供たちに向かい合っている。この不思議さをこれ以上追求する気はない。追求を断念した食卓で、それは起きた。

 「お父さん、お願いしていいですか?」

 念のために、お父さんとは私のことである。発言者は、息子の嫁だ。

 「何?」

 「このビデオテープを、DVDにしてほしいんですが、お願いできませんか?」


 私は、この女性の夫の父である。2人の結婚を祝福したのはつい半年ほど前のことだ。断れるわけはないではないか。
 最近の若い女性は、人の弱みにつけ込むのがうまくなったのか? それとも、彼女だけの特質か? ま、それも追求はしない。

 「何なの?」

 「いえねえ、今日叔母の家に行ったんですけど、顔のマッサージで綺麗になるという番組を録画したらしく、私にも見ろっていうんです。それでテープを借りてきたんですけど、このテープ、必ず返せっていうんです。それでDVDにして頂けないかと……」


 子供(瑛汰)を連れて我が家に来ていた次女がいった。

 「あ、それほしい。お姉ちゃんもほしがるよ!」

 マッサージだけで美しくなる? それが事実なら、すべての化粧品メーカーが倒産するではないか! デパートの1階から化粧品売り場が消失するではないか! 
  面白い!!

 私は、

 「美しい人はより美しく、美しくない人はそれなりに、というのが世の常識ではないか?」

 とのど元までせり上がってきた真実の言葉をぐっと飲み込んで、DVD化を引き受けた。真実より、面白さの方が優先する。

 2人が帰って、DVD化に取りかかった。テープを一覧すると、該当箇所は17分。たった17分でDVD-R1枚を使うのはもったいないが、この際仕方がない。

 テープからDVDにするには、早回しはできない。17分をDVD化するには、17分+αの時間がかかる。その間ほかに何もすることがない。仕方なく、画面に見入った。見てみたい、ともった故の行動ではなかったことを、強調しておきたい。

 その主張は、次のようなものであった。

 いらないものはリンパに捨てましょう。顔の耳に近いところに窪みがあります。ここを3本の指で強く押さえます。そのまま顎の脇を通って鎖骨まで下ろします。これを3回……。

 要は、顔の皮膚の下中で自分がいらないと思うものを、この窪みまで力任せに押しだし、そのまま鎖骨まで押し下げる。たったこれだけで、顎の下のたるみ、額の皺、頬の余分な肉、すべてが顔面からバイバイしてくれるというのである。17分は、そのやり方を映像化したものである。

 「本当かよ?」

 誰でもそう思う。私もそう思った。だが、映像の説得力は馬鹿にならない。

 「ま、やってみて効果がなかったらやめればいいことだし……」

 いつしか私は、テレビの画面とにらめっこしながら、我が顔面をマッサージしていた。強く押さえて、そのまま耳の近くの窪みを経由して鎖骨へ、鎖骨へ。17分が終わった。

 「私、綺麗になったかしら?」

 なぜか、を引き寄せていた。

 こうして作った原盤から、本日、3枚のDVDを作った。申請をした長男の嫁用、長女用、次女用、それに我が妻用、である。

 作業は終えた。週末までには、すべて当人に渡る。
 妻は、

 「私、いらないわ」

 といっているが、なあに、映像の説得力は、私も屈するほど強い。しばらくすれば、私同様、テレビの画面を見ながら、3本指を耳のそばの窪みから鎖骨まで押し下げているに決まっている。

 かくして――。

 2ヶ月もすれば、私は周囲の羨望の視線を浴びる。

 「安堂さんって、お幸せよね。だって、奥様からお嬢様、ご長男のお嫁さんまで、どうしてあんなに美しいのかしら

 関西テレビの納豆事件から日も浅いのに、我が家には懲りない面々がそろっている。我が誇りである。

 なお、この件に関しては、検証レポートは絶対に書かない。書けば、我が安全に自信が持てない。

 やっぱり、剣はペンより強いのだ。安全第一。くわばら、くわばら。

 

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