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 2008年3月30日 ゲーセン

 朝、川崎まで買い物に出た。23日日曜日、義父の米寿の祝いをした。その時撮った写真をA4に引き延ばしたら、額装しておじいちゃんの部屋に飾りたいと妻が言い出した。その額を買いに行ったのである。

 さいか屋の地下駐車場に車を入れた。妻は額を買いに上層階に昇る。ここまで来たら、妻は地下食料品売り場で食料品も買いだめするに決まっている。付き合ってはいられない。

 「俺、ブックオフに行ってくるわ」

 二手に分かれ、それぞれの目的地に向かった。

 川崎のブックオフは川崎モアーズの中にある。地下街を通って向かった。目的は、舞城王太郎の小説である。「文学賞メッタ斬り!」(ちくま文庫)を読んだら、やたらと褒めていた。が、まだ読んだことがない作家である。書店で定価で購入するのはためらわれる。こういうときこそ、ブックオフを活用する。安く買って、つまらなければそれっきりにすればいい。面白ければ書店に行って買い込めばいいのである。

 川崎モアーズは、1階から3階までがゲームセンターである。エスカレーターでブックオフに向かう私の耳に、まだ午前中にもかかわらず、キューン、ビューン、ダダダダア、などの機械音が飛び込む。辟易するほどうるさい。

 資本主義社会では欲望をキーワードにしたゲームが演じられる。欲望のあるところに市場が生まれ、その土壌で人の欲望を刺激し続ける者が勝者となる。
 その程度のことは理解している。だが、午前中からゲーセンに入り浸り、バーチャル空間で殺したり殺されたりするゲームに熱を上げる若い連中から金を取るのは健全なビジネスか?
 ったくお前ら、そんだけ若いのに、ほかにやることないのかよ。親の財布からくすねてきた金をこんなところに注ぎ込んでどうしようってんだ? あ〜あ、日本の将来は暗いよ。

 と、いつもならおじさんらしい嘆き方をする。
 が、今日は違った。ギョッとした。
 いたのである、本来は嘆く側に立つべきはずのおじさんが、ゲーム機の前に。年の頃は50前後。小太りで髪はやや薄い。そのおじさんがガキどもに混じり、会社でもこんな顔はしないんじゃないかというほど真剣な顔でディスプレーをにらみつけ、両手を小刻みに動かしている。
 アチャー!

 普通なら、家族持ちの年代である。日曜日の午前中は、普通なら家族の時間である。なのにこの人、この時間に、どうしてこんなところにいるのだろう? 家にはいられない理由でもあるのか?
 夫婦喧嘩? でも、夫婦喧嘩してゲーセンに来るか?
 浮気がばれた? でも、浮気がばれてゲーセンに来るか?
 気分転換? 気分転換にゲーセンに来るオヤジって……。
 ゲーム機メーカーの社員? 日曜なのに、自社のゲーム機をテストしてる? ご苦労様!
 それとも、独身貴族? 貴族なら貴族らしくしなくっちゃ。
 いずれにしても、50面下げたおっさんが出入りする場所じゃないだろ?
 
 誰でもいいから殺したかった、なんていうおっかない事件が続発している。日本で、人間が、社会が、どこかで壊れ始めている。
 だからこんなおっさんが登場するのではないか。さて、このおっさん、いまの社会のどんな層を代表しているのだろう?

 日曜の朝から、なんだか世を儚みたくなった。私たちはどこに行こうとしているのだろう?


 舞城王太郎の小説は2札見つけた。ついでに目についたジェフリー・ディーバーの小説も買った。

 ブックオフのビニール袋を下げて、妻との待ち合わせ場所に戻った。

 「また本を買ったの? いっぱいあるじゃない!」

 本を読まないヤツに、本が好きなヤツの心は分からない。

 自宅に戻ったら、米寿の祝いの写真を多数プリントさせられた。あちこちに配るのだという。iPhotoで必要な写真を選び、紙を最も無駄にしないためにはどのような組み合わせが最適かでプランニングし、画質を調整、1枚の紙に4枚の写真をプリントをする。できあがるとカッターで1枚1枚切り離す。すべて私の仕事である。命令権者はできあがった写真を小分けにして袋詰めするだけだ。

 世を憂い、頭を働かせ、体を動かす。そう、そろそろ犬の散歩の時間である。
 いつもながら、私の週末は平日より忙しい。

 

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