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 2008年6月9日 高圧洗浄機

 高圧洗浄機を買った。先週末のことだ。

 高圧洗浄機を我が家で使い始めたのは7、8年前のことだ。雑誌か何かで見て、どうしても欲しくなった。洗車のためである。

 いくら自分の車とはいえ、冬場に水洗いするのは辛い。左手でホースを持ち、水を流しながら右手で車体を洗う。スポンジなど使うと車体を傷つける恐れがある。我が柔肌で車体を丁寧に愛撫しつつ汚れを洗い流してやるのである。
 車体の愛撫をしばらく続けていると右手がかじかむ。えーい、洗車なんかやめようか。だがまだ半分も洗えていない。ここでやめては、まだら模様の車になっちまう。我慢して愛撫を続ける。ああ、右手がチリチリしてきた……。
 という冬をいくつも過ごした。だから、高圧洗浄機が欲しくなった。これだと、高圧水で汚れを吹き飛ばす。あとは車体に残った水滴を拭き取ればいい。労力は3分の1に減る。労働を金で買う。ちょいとしたブルジョワジーになった気分が味わえる。

 買ったのはケルヒャーの高圧洗浄機だった。あのベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、ポルシェと同じドイツ生まれである。車好きがあこがれる国である。そこで生まれた洗車機械の性能に間違いがあるわけはない。

 ホースを水道につなぎ、プラグをコンセントに差し込む。電源を入れ、レバーを握ると先端のノズルから勢いよき水が噴き出す。車体についた埃や泥が気持ちいいほど飛んでいく。なるほど快適だった。月に1度か2度使い続けた。やがて手放せなくなった。

 不具合が起きたのは2年ほど前だった。本体から水が漏るようになった。修理できるものならと分解を試みた。だが、特殊なネジが使ってあり、我が家にある工具では刃がたたない。じゃあ買い換えるか? いや待て。多少水が漏れてもさしたる問題はないではないか。実害といえば、時折漏れた水が私の足にかかり、濡らす程度だ。濡れた足などタオルで拭けば元通りになる。命の次に大事な金をつぎ込むタイミングは遅ければ遅いほどいい。

 と使い続けたケルヒャーの高圧洗浄機が昇天した。1ヶ月ほど前だった。ホースを水道につなぎ、プラグをコンセントに差し込む。電源を入れると、ウインとひと吠えする……はずが、ウンともスンとも言わない。レバーを握っても水が出ない。モーターがいかれたか、配線がダメになったか。

 「買い換え時か」

 かくして、先週末の土曜日、近くのLIVEPIA に出かけた。チラシに、高圧洗浄機の安売り広告が載っていたからだ。
 安売り機種は、リョービのAJP-1400。 税別で希望小売価格3万2000円である。それに5500円の延長ホース、1350円の洗浄ブラシがつく。このセットで税込み1万6800円。なんと6割近い値引率である。
 おいおい、6割も値引きする賞品って、大丈夫かい?

 店頭には使い慣れたケルヒャーの製品も並んでいた。性能を比べて みた。このリョービ製品、はき出す水の圧力は8.5MPaとある。MPaが何の略かは分からないが、どうやらこの数値が大きいほど水の勢いは強いらしい。同等品をケルヒャーで探した。ない。最大で8MPaで、そんな能力を持つものは価格が4万円を越す。
 価格差はベンツとカローラほどある。いや、ベンツより遙かに高出力のエンジンを積んだカローラである。東名でベンツをぶっちぎるカローラである。なのに、6割引……?

 だが、迷わなかった。すぐにリョービを買おうと決めた。なーに、いまや日本車は、ドイツ車と並ぶブランド品である。乗り心地やハンドリングはドイツ車と比べていまいちだといわれるが、故障は遙かに少ないとの定評がある。
 私は高圧洗浄機に乗ってドライブに出かける予定は、当面ない。だから、乗り心地、ハンドリングは無視していい。安くて高性能。それでいいではないか?

 かくして我が家にやってきたリョービAJP-1400は、その日から活躍した。

 我が家にとって2代目となる高圧洗浄機の最大の特徴は、末期のケルヒャーと違って水漏れしないことである。1万6800円の投資が無駄でなかったことの証は、新機種の特徴を最大に生かすことで得られる。ために、活躍の場は、まず屋内に求められた。
 浴室の配水管の掃除である。

 浴槽の排水がつまり気味であることは、3、4ヶ月前からの問題だった。様々なパイプ洗浄剤を試してみた。だが、相変わらず水はけが悪い。シャワーを浴びていると、足下に水たまりができるほどだ。高圧洗浄機を使えば何とかなるのではないか? だが、水漏れする機械は屋内には持ち込めない。ケルヒャーをもしのぐ吐水能力を持ち、しかも水漏れしないリョービAJP-1400は、この悩みを解決してくれるはずだ。

 本体に給水ホース、高圧ホースをつなぎ、給水ホースは流しの蛇口につないだ。プラグをコンセントに差し込み、水を出す。さて、これで浴槽を……。

 あれーっ、水が漏れてるよ! どこだ? おっ、給水ホースと本体のつなぎ目から勢いよく水が流れている!! 新しく買ったのに水漏れ! 俺、水天宮の鳥居に立ち小便したことがあったっけ?

 ※注
 高圧洗浄機のテストは、必ず屋外で行うこと。水漏れ等がないことを確認するまで屋内に持ち込んではなりません。


 というセオリーに従い、屋外に運び出した。もう一度、給水ホースを本体にしっかりと取り付ける。水道につなぎ水を出す。今度は漏れない。ねじ込み方が悪かったらしい。試しに吐水してみる。確かに勢いがある。ついでに、車のホイールを洗っちゃえ!

 屋内に戻ったリョービAJP-1400は大いに活躍した。まず浴槽である。洗い場に排水溝に激しく水を拭きかける。どす黒い色をした水が逆流し、洗い場がどろどろに汚れた。そうか、こんなに汚れがたまっていたか。水がはけないはずだ。
 続いて浴槽の配水管も洗浄する。ついでに、ガス釜とつながっているパイプにも水を吹き込む。ここには湯あかがこびりつく。

 うーん、気持ちいい。よし、次は洗面台の排水パイプだ。ついでにベランダも洗ってやれ。エアコンから出る水で、一部にこけが生えてるもんなあ。

 1時間ほどかけて気になっていたところを洗った。おかげで、ベランダは素足で歩けるようになった。
 夕方、瑛汰と風呂に入った。風呂のふたを開ける。湯あかは浮いていない。よしっ!
 ベビー石けんで瑛汰を洗う。頭からシャワーをぶっかけてシャンプーする。また頭からシャワーをぶっかけて石けんを洗い流す。洗い場に水はたまらない。よしっ!
 満足である。いい1日だった。

 ん? 車? 洗車? 
 当面、洗車の予定はない。なにしろ、関東地方は梅雨入りしたのである。週末に車をピカピカに磨き上げても、平日に雨が降って次に乗るときはもう汚れている恐れがある。梅雨時の洗車は無駄である。


 

(余談)
「平日に雨が降って次に乗るときはもう汚れている恐れがある」
と表現すべきところを、
「平日に雨が降って次に乗るときはもう汚れている可能性がある」
と表現する文章やアナウンサーによく出会う。見苦しいし、聞き苦しい。
「可能性」とは、明るい見通しについて使う言葉である。いやなことが起きそうな際は、「危険性」「恐れ」などを使う。プラスでもマイナスでもない未来については「公算」を使用する。日本語とはそのような言葉である。
文章や言葉で生計を立てておられる方は心していただきたい。

 

 国産の高圧洗浄機は上々の滑り出しを見せた。だが、褒めるのはまだ早い。ドイツ製のケルヒャーとの違いが分かるまでには、まだまだ時間がかかる。評価は、ケルヒャーと同じほどつかいこんで初めて現れる。
 さて、老舗ケルヒャーと、国産のリョービの勝負はどうなるであろうか?

 できれば、さすがに国産は素晴らしい、といずれ書きたい。
 そう思う私は、国粋主義者なのだろうか?
 それとも、もうこれ以上高圧洗浄機に金をつぎ込みたくないと願う、単なるけちなのだろうか?

 判定は読者におまかせするしかない。

 

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