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 2008年6月23日 戦闘モード

 というわけで、と書き始めても、おおかたの読者にはついてきていただけるものと思う。こんな荒っぽい書き出しではフォローができないという方は、こちらをまずお読みいただきたい。ネット通販のトラブルを巡る物語である。

 「京問屋本舗 楽天市場店」

 の営業時間は、月曜から金曜日までの午前11時から午後5時。私は今日、午前11時を待ちかねて「お客様サポート」の電話番号を回した。

 「先週土曜日にネット経由で電動カーを申し込んだ者です。昨日商品は届いたのですが、実は一部壊れていまして、昨日メールでお知らせしたのですが、お休みだったらしくて返事をいただけませんでした。それで電話をしている次第です」

 通信販売で買い物をする場合の問題点は、相手が見えないことである。ネット上には、確かにその店は存在する。だが、一体どんな人たちが販売しているのか、店舗はどんな様子なのか、信頼できる販売主なのか、胡散臭い連中なのか。そんなことがまるで分からないままに注文する。
 だから、トラブルも起きる。価格.comのクチコミにも時折そのようなレポートがある。だからこのサイトでは、代金引換での決済を薦めている。商品と引き替えに代金を支払うのなら、まあ、安心である。金は払ったのに商品が来ない、などということが防げるからだ。
 だが、金を払った後、開封してみたら壊れていた。そんな場合、見も知らぬ販売店はどこまで信頼できるのか? それが今回遭遇した問題であるた。だから闘いを決意した。電話は開戦の通告である。どんな弾が返ってくるか。

 「あ、そうでしたか。それは申し訳ありませんでした」

 相手は女性であった。しかも、受け答えがソフトであった。闘いに備えて体内を駆けめぐっていたアドレナリンが、やや沈静化した。
 待て待て、これは相手の目眩ましかもしれない。決着を見るまでは気は抜けない!

 「それで、交換して欲しいんですけど、どうすればいいですか? いや、壊れていることが分かった後、オタクのホームページを見てみたら、この商品、売り切れって書いてありました。とすると、交換していただくのも不可能なのかと思っているのですが」

 1つ1つ事実を積み重ねる。当面の戦い方はそれしかない。

 「あー、そうでしたね。在庫があればすぐに交換できるのですが。あのー、在庫を調べますのでお待ち願えますか?」

 ん? 売り切れた商品の在庫がある? 不思議なことだ。目眩ましの上に目眩ましを重ねるのか? 再び、アドレナリンの分泌が始まる。

 「だけど、品切れ商品の在庫がありますかねえ?」

 ちょいとジャブを放ってみた。

 「はい、調べて在庫がなければ、申し訳ありませんが、引き取り・返金ということにさせていただきたいのですが」

 引き取り・返金?

 「それは、どうすればいいのですか?」

 「こちらから業者を出しますので、お買い上げいただいた電動カーを段ボールに戻していただき、その業者にお渡しください。その際、返金させていただきます。ですので、決してご自分で送り返そうとはなさらないでください」


 極めて明瞭である。そうか、金を返してくれるのか。ひょっとしたら、なかなか良心的な販売店ではないのか? アドレナリンの分泌が止まった。

 「はあ、そういうことなら、在庫を調べていただきましょう。このままお待ちしましょうか?」

 「いえ、時間がかかりますので、一度電話を切らせてください。本日中にお返事しますので」


 在庫は普通、倉庫にあるものだ。私を電話口で待たせ、倉庫に電話を入れて在庫の有無を確かめればいいではないか? 何故にそんなに時間がかかるのだ? やっぱりアドレナリンが必要か?

 「では、電話を切りましょう。でも、もし在庫がない場合、メーカーから取り寄せていただく、などの手段もご健闘願えないでしょうか? 1週間や10日なら待ちますので」

 おいおい、相手を疑いながらこの発言はないだろう! テメエ、そこまで女に弱いのか? それとも、金は返すといわれて戦闘意欲を失ったか?

 「はい、分かりました」

 こうして電話は切れた。私は待った。
 営業時間は午後5時まで。とすれば、本日中の返事も、午後5時までには来るはずである。返事をするのにさほど難しい作業は必要ない。普通なら、午後3時、遅くても4時までには電話は来る。
 と判断して待った。

 午後3時。来ない。
 3時半。来ない。
 4時。来ない

 再び、アドレナリンの分泌が始まる。おのれ、今朝方は口先で丸め込まれたのか? このまま返事が来なかったらどうする? 京都まで乗り込んで戦うか? でも、1万円の商品なのに、交通費は2倍以上かかるぞ。ふむ、いずれにしても4時半になったらこちらから電話をしてみよう。

 「どうなってるんだ!」

 と怒鳴りつけるのか?

 「いや、あまりにお電話がいただけないので、間違った電話番号をお伝えしたのではないかと不安になりまして」

 と下手に出るか?
 気が弱いからなぁ。女に弱いからなぁ。下手に出そうだなあ……。下手に出る場合も、これが闘いであることだけは忘れないようにしないとなぁ……。

 4時10分。電話は来ない。
 15分。来ない。
 20分。来ない。
 この野郎! ホントに電話してくる気があるのか!

 21分。来ない。
 22分。来ない。
 23分。来ない。
 24分。来ない。

 4時半になったら、こっちから電話をしてやるからな! 覚悟して置けよ!!
 我が戦闘モードは最高レベルに達し、目が痛くなるほど電話をにらみつけた。

 4時25分、電話が来た。我が戦闘モードの高まりに恐れをなしたか?

 「お待たせしました。倉庫を探したら、1台だけ在庫がありました。開封して、破損がないかもチェックしました。どこも壊れたいません。それで、本日これから発想させていただきたいのですが?」

 「ありましたか。それはよかった。どうもありがとうございます。早速送ってください」

 戦闘モードのレベルはゼロに下がった。闘いは、戦端を開く前に収束した。というか、闘いになるはずが、友好関係が生まれた。

 「京問屋本舗 楽天市場店」。なかなかすぐれたネットショップである。昨日も書いたように、他店では送料別でで1万1800円、1万4175円で売っているものを、期間限定とはいえ、送料込み1万円で売る根性がいい。それに、商品に問題が生じた時の、この迅速な対応もいい。これからもお付き合いが出来そうである。
 
 商品は、明日届く。

 「本当に今回はご迷惑をかけました。電動カーをお待ちになっているお子様にもよろしくお伝えください」

 さすが、今日の人である。言葉にもそつがない。

 「ありがとうございます。うちの子どもにも伝えておきます。ただ、残念ながらと、ごめんね、よろしく、だってさ、と話しても、まだ理解できる年齢ではありませんが」

 最後はジョークで幕を引いた。闘わずに済んで、私、相当に気分をよくしたらしい。根っからの平和主義者である。

 瑛汰ぁ〜、壊れてないブーブークルマが明日届くぞ!

 ふーっ、一件落着。今晩中に手元の電動カーを箱詰めにしなくては。
 でも、あれほど分泌していたアドレナリンは、どこに消えたのだろう?

 

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