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 2009年9月27日 趣味

 突然だが。
 10月からギター教室に通う。この計画は、すでにポイント・オブ・ノーリターンを越えた。10月分の月謝を払い込んだのである。引くに引けない。

 私がエレキギターを買ったことは、この日誌の「2008年11月16日 小指が……」でお知らせした。購入のきっかけも、買ったのがFender Japan ST62-DMC/VSP 3TS というモデルであることも書いた。ギターの写真もそこに入れておいたから、ご関心のある方は、該当の日誌を再読して頂きたい。
 
 以来、10数回はケースから出して弾いた。教則本もタブ譜のある楽譜も買い、Eric ClaptonSunshine of your loveなどに挑んだ。念を押す。弾いたのではない。挑んだのである。

 世の中は甘くない。挑戦は跳ね返されるものである。跳ね返されても挑み続けることで、いつか勝利の美酒に酔える。小泉チルドレン小沢チルドレンに入れてもらえない以上、それが現実である。
 が、情熱は冷める。情熱を持ちっぱなしでは疲れて仕方がないのが人間だから、冷めるのは自然の理ではある。勝利の美酒の香りもかがないうちに、挑戦の意欲は衰える。私の情熱も衰えた。
 
 それでも、もう一度ギターケースを開こうと思った。なにせ、情熱に駆られた時期だったとはいえ、10万円を超す金を投資したのである。情熱は冷めても、もったいないという気持ちは残る。
 もったいない。では、どうすればもったいなくなるか? 使うことである。使うためには弾けるようにならねばならぬ。弾けるようになるためには、専門家の教えを請うのが早い。

 と、まあ、そんな次第で、桐生での生活もやっと落ち着いてきたこともあり、ギター教室の門をくぐることにした。もったいない入学である。塾にも行ったことがない私にとっては、初めての習い事となる。

 本町通にある「テンション」というギターショップが、私が通う教室である。事前に何度か足を運び、話を聞いた。

 「ギターでどんな曲をやりたいのですか?」

 店員が聞いた。私は胸を張って答えた。

 「1年後にClaptonになるのが目標です」

 私の言葉を店員君がどのように受け取ったかは、恐ろしくて聞けなかった。

 「わかりました。うちの教室は、事前に1回だけ無料で受講して頂けます。試してみられますか?」

 こうして私は、先週の木曜日、24日に、愛用の、というほど使ってはいないFender Japan ST62-DMC/VSP 3TS と、ちょうど遊びに来ていた長女の長男啓樹を車に乗せて、教室に向かった。お試し授業は午後6時スタートである。

 狭い教室に入り、指導教官に挨拶した。40代だろうか。

 「桐生で、ギターで食べていくのは大変でしょうねえ」

 ま、挨拶代わりの問いかけである。啓樹は行儀良く椅子に座っている。

 「はい、昔は飲み屋でお金をいただいて演奏したりしていたんですけど、いまはこっちがお金を払わないと演奏させてくれませんからねえ」

 なるほど、桐生からはお金がなくなりつつあり、夜の巷も世知辛くなっているらしい。私の払う授業料、毎月7350円が、指導教官の暮らしに一助になれば幸いである。

 「どんな曲をやりたいのですか?」

 いつかと同じ質問をされた。私も、いつかと同じ返事をした。

 1年後にClaptonになるのが目標です」

 だが、さすがは指導教官である。さらに踏み込んだ質問をするではないか。

 「どの時期のClaptonですか?」

 物事がわかっている人と話すのは楽しい。確かに、Claptonは時期によって曲想が違う。

 「後期、ですかね。本当にClaptonがいいなと思ったのは、Change the worldからですから」

 私も踏み込んだ答えを返した。さらに

 「もともとはBeatlesなんですけどねえ。そうそう、ここにいるのは長女の長男で啓樹というんですが、こいつはまずClaptonで、Beatlesも聴き、サザンオールスターズにどっぷりはまってエレキギターを欲しがったんで、去年の12月、4歳の誕生日にプレゼントしたんですわ。それも桑田と同じテレキャスのスリートーン・サンバーンでなくっちゃいやだっていいましてね。それで、私もエレキギターを買おうと思い立って、同じスリートーン・サンバーンにしたんです。ああ、、啓樹はいま、Michael Jackson神様ですけどね」

 いかん、いかん。ここは雑談の場ではない。神聖な授業の場である。ギターの演奏について教えを請う場なのだ。雑談は別の機会にでもすればいい。

 指導教官が白紙の五線譜を取り出した。ト音記号を器用に書き、4小節に三連符を書き込む。コードはE7 A7 E7 B7 とある。

 「ちょっと、これをやってくれますか?」

 いきなり三連符? リズムがとりにくいんだよなあ。
 が、指導教官の言葉は絶対である。左手でE7を抑え、右手に持ったピックを上→下、下→上、上→下、と動かし、左手を動かしてコードを変え……。

 授業は続いた。次は、2本の弦だけを使った奏法である。

 「ほら、この2フレットを人差し指で抑えてこの2弦だけを弾くとEの音になります。で、こうやって、薬指で4フレットを押さえて、次は小指で5フレットを抑えて」

 指導教官は見事に弾きこなす。まあ、それができるから指導教官であるわけだが。

 「はい、ではやってください」

 えっ、俺がやるの?
 が、心の内でどれほど反発しようとも、私はいま生徒なのだ。指導教官の指示には絶対服従である。
 人差し指で押さえるのは簡単だ。ジャラン、と弦をかき鳴らす。薬指で4フレットを抑えるのもそれほど困難ではない。ジャラン。次は小指……。おいおい、そこじゃないって、抑えるところは。それは隣の弦だろうが。それじゃあ音がまとまらないんだって!

 数回繰り返すうちに、多少は音楽になってきた。すると、指導教官が自分のギターを引き寄せ、私のジャランをバックに華麗なリードギターを弾き始めた。
 おいおい、俺がやりたいのはそっち! かっこよくリードギターを決めたいのよ。あんたにやられたんじゃ、俺の出番がなくなるジャン!
 まっ、サイドギターも満足に弾けないいまの俺には、リードギターの華麗なフレーズなんて夢のまた夢であることは確かだけどさ……。
 でも、私のリズムも音も狂った伴奏で、よくリードギターが弾けるね。指導教官、あんた、偉い!
 

 あっという間に30分がたった。

 「安堂さん、とおっしゃるのですよね。安堂さん、次回までに、どの曲をやりたいか決めてきて頂けませんか?」

 指導教官がおっしゃった。えっ、基礎練習はいいの? あれ、味も素っ気もないけども。

 「はい、指運びの磯練習って楽しくないんですよね。それに、あの練習はある程度技術を身につけた人がやれば意味があるけど、初心者の方には退屈なだけで、あまり役に立ちません。好きな曲を何とか弾きこなす努力を重ねれば、それなりにテクニックも身に付くし、第一、楽しいじゃないですか」

 私はこの指導教官を認める。この先生について行く。

 「わかりました。で、先生、どれぐらいの時間をかければ一応弾けるという段階に達するのでしょう?」

 指導教官は困った顔をした。

 「いや、そういわれましても、これだけは個人差がありますから」

 ああ、そうですか。そりゃあそうですね。そこは納得した。でも、本当は聞きたかった。

 「歳をとると、上達は遅くなるのでしょうか?」


 したかった質問をしなかったのは、私のプライドのせいだろうか?

 私の有料個人レッスンは10月5日から始まる。それまでに最初の課題曲を決めなければならない。Tears in Heaven? Wonderful Tonight? Change the world?

  しばらく悩みそうだ。

 で、今日。
 長く我が家に滞在した長女と啓樹が昨日、横浜の次女のもとに去った。今日は、まとわりついてくる子供も、どこかに遊びに行こうとせがむ子供もいなかった。老妻と2人だけの我が家である。
 昼食後、ギターを持ち出した。2弦奏法の復習に取りかかった。
 20分ほど続けたら、左手の筋がパンパンに張ってきた。そこで断念した。

 私の肉体は、筋肉は、筋は、決して若くない。そういや、Claptonはずっと若いうちからギターをやってんだよな。我が「目指せClapton」は前途多難の予感がする。

 多難ぶりは、おいおいご報告することになるはずである。

 

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