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 2010年1月21日 節穴

 人にはがある。
 眼があるのは、

 「私の眼、大きくてくっきりした二重まぶたで、綺麗でしょう。君の瞳は100万ボルト、っていわれちゃった。私の眼ってそんなに魅力的?」

 と自慢するためではない。

 「小さいねえ。おまけに一重まぶたで、まるでぞうさんの目だって?! そんな……」

 と、ほとんどにおいて秀でる私に唯一の泣き所を与えるためでもない。

 眼があるのは見るためである。でなければ、「人は見た目が9割」という本がベストセラーになるはずがない。
 と、ずっと思っていた。しかし、最近、せっかく神が与え給うたこのありがたい機能を有効に使っている人がほとんどいないことに驚く。
 おいおい、君たちの眼はいったい何のためにある? それとも、そこにあるのは単なる節穴か!?

 昨日の日誌で予告した通り、昨日の午後から、私はスポーツサンダル姿で外出している。昨日は、スポーツサンダルに紺色のズボン、上はグリーンのセーターという姿であった。小春日和だったので、マフラーはしなかった。足元だけが異様である。
 その姿で、約6時間、自宅を離れた。大勢の知り合いに会った。

 「おっ、滑り込みセーフだね。遅刻してたらまた上司にどやされたぞ」

 「君、またぼやいてんのか。もっと強くならなくちゃ」

 「ごめん。私の取り仕切り方が悪くて、こんな時間になっちゃった」


 いろいろな知人と言葉を交わした。

 今朝はスポーツサンダルにベージュのズボン、焦げ茶のジャケットという姿であった。今朝も暖かかったのでマフラーはなし。前日を上回る異様な姿である。

 「頼まれていた『湊屋藤助』が来たんだけど、何本いる?」

 「どうしたの、朝から浮かない顔をして。えっ、気の合わない上司とどう付き合ったらいいかって? あのね、同じ上司が3年も君の上にいることはないから、できるだけそばに寄らずに我慢しろよ。時間がすべてを解決するから。我慢してもいろいろいってくるって? そりゃあ右の耳で聞くふりをして左の耳から垂れ流せばいいさ。あ、かかしが何か言ってる、それ人間語じゃないぞ、ですませればいい。腹が煮えくりかえる? うん、喧嘩をするのも1つの方法だ。でも、上のヤツと喧嘩をするのなら、必ず勝てる喧嘩をしなくちゃいけない。そして、喧嘩を始めたら徹底的にたたく。相手が再起不能になるまでたたく。生殺しはいけない。必ずやり返しに来るから。ただし、そんなヤツはあとで裏に回って君の足を引っ張るかもしれないので、その覚悟だけはしておかねばならない」

 今朝もいろいろな人と会い、話をした。

 それなのに、である。

 「安堂さん、どうしたの? 冬場にスポーツサンダルをはいたりして。着てるものとチグハグじゃない。いつもお洒落な安堂さんとも思えない」

 と、問いかける人が誰1人いないのは何故なのか?
 君たちの眼は節穴か? 節穴じゃないというんなら、ちゃんと見見えていることを証明してみろよ!!

 あ、そうか。あいつら、俺に感心がないだけか。関心がなけりゃ、見ても見えず、だもんな……。

 それに引き替え、わが家族は、まだ多少は私に関心を持っているようだ。
 昨夜10時頃、普段はほとんど電話などしてきたことがない長男から電話があった。靴が固い地面を踏みしめる音も聞こえてきたから、会社帰りで歩いているらしい。

 「8針だって? やっぱり、もう歳なんじゃないの?」

 この息子、オヤジが弱るのがそんなに嬉しいか? 未だに俺は、お前がどうしても乗り越えられない壁なのか? 壁を早く乗り越えたいのか? 壁が低くなれば乗り越えやすいもんなあ。

 「あのなあ、日誌に書いていたように布団の上で滑っただけだ。むろん、もっと若かったら滑らなかったかもしれない。滑っても、右足を踏ん張る場所が違ってけがはしなかったかもしれない。でもなあ、オヤジが歳をとって弱るのがそんなに嬉しいか? オヤジが弱って困るのは(ひょっとしたら介護をしなければならないかもしれない)お前の方じゃないのか?」

 息子はいった。

 「あっ、うん、そりゃあそうだね。いつまでも若くしててよ」

 ()の中は言葉にしなかったが、息子は()の中を瞬時に理解したようである。
 息子よ、成長したな。
 だが、オヤジの壁はまだまだ高いことを思い知ったか!
 この勝負、どう見ても私の勝ちである。
 ま、勝ってもしょうがないが。


 「リン」が昨日からハンガーストライキに入った。ペットフードを食べない。キャベツを湯がいても食べない。鶏肉、豚肉に火を通しても見向きもしない。
 今朝は、ささみジャーキー、チーズとささみのジャーキー、犬用の煮干しを買ってきた。口のそばまで持って行っても顔を背ける。
 昼、昼食で自宅に戻る際、バターなどが入った菓子パンを買ってきた。小さくちぎって口の中に入れたが出した。

 意志堅固なハンガーストライキである。牛乳もあまり飲まない。アイスクリームも、ほとんど食べない。体内に入れているのは水だけである。なのに、1時間に1回は尿を漏らし、時折嘔吐する。胃の中に何もないから、黄色い胃液を吐く。

 わかった。要求はすべて受け入れる。直ちにハンガーストライキを中止せよ。

 何度も伝えているつもりなのだが、とにかく意志が固い。この頑固さ、飼い主に似たのだろうか……。

 

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