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 2010年1月25日 リンが死んだ

 リンが死んだ。今朝8時25分だった。横たわったリンの顔を私が持ち上げていたら、ふっと全身の力が抜けた。心臓の鼓動を確かめようと左胸に手を当てたが、何も感じられない。荒かった呼吸音も聞こえなくなった。突っ張って持ち上げていた左前足も、間もなく床に落ちた。
 時計に目をやった。8時25分だった。

 昨夜、最後にリンの様子を見たのは11時半頃だった。事務室を出てダイニングに行くと、ペットシートの上で右を下にして寝そべっていた。
 それまで時折起きていた痙攣もない。呼吸音も静かになっている。胸が上下しているから呼吸も正常だ。眠りについているようだ。睡眠を取って、明日の朝元気な姿を見せてくれよ。
 起こさぬよう静かに離れた。もっとも、元気なときだったら、そばに寄っただけで目を覚まし、ムックリと起きあがっていたが。

 今朝目覚めたのは6時半である。すぐにリンの様子を見に行った。
 リンの口を中心に、床が広く濡れていた。飲んだ水を吐いたのか? キッチンペーパーで拭き取ると、どろりと粘りけがある透明の液体だった。リン、何を吐いた?

 水浸しになったところに寝かせておくのは可愛そうである。別の場所にペットシートを敷き、抱き上げて移した。汚れたペットシートを片づける。妻を起こそうかと思ったが、まだ6時半だ。汚れたところは私が綺麗にすればいい。

 朝食のテーブルは、横たわったリンのそばである。朝飯をかき込んでいると、リンの痙攣が頻繁になった。食卓を離れ、頭をなでても反応はない。

 しかし、なぜ痙攣する? 血液検査の結果もそれほど悪くなかったし、ひょっとしたらガンが脳にでも転移したか?

 朝飯を終え、事務所に入ってネットで痙攣を調べた。むろん人間の痙攣について書いてあるのだが、犬も大差なかろう。
 中に、低血糖というのがあった。血糖値が下がっても痙攣するらしい。ダイニングに戻り、リンの血液検査の結果を見る。血糖値は正常である。では何だ?

 再び事務室に戻り、痙攣のページを読んでいたときだった。リンが

 「キャン」

 と一声鳴いた。妻が

 「お父さん!」

 と呼んだ。急ぎダイニングに行った。そして、冒頭のシーンである。リンが死んだ。

 
 大人になって飼い犬の死に直面するのは2回目である。
 1回目もシェットランド・シープドッグだった。名前をラリーといった。
 ラリーは夜中に急に吐き始め、娘と妻が24時間の動物救急病院に連れて行った(私は泥酔して白河夜船だった)。そのまま入院し、翌日、掛かり付けの医者に転院させた。

 吐き気の原因はわからなかったが経過は順調で、

 「明日退院です」

 といわれた、その「明日」の朝、病院から電話があった。

 「ラリーちゃんが亡くなりました」

 私が病院に駆けつけたときにはまだ温かかった。息を引き取ったのは、おそらく早朝である。
 退院する日の朝、誰も見ていない檻の中で死ぬ。まあ、誰にとっても死は1人だけで迎える孤独なものである。それはわかるが、あまりに可愛そうな死であった。

 リンは、自宅で、飼い主に見守られながら、飼い主に顔を抱えられて息を引き取った。ラリーに比べれば、まだ良かったと思うしかない。

 すぐにペットの葬儀屋に頼み、火葬に付した。明日は仕事が忙しくて行けないが、明後日朝、骨を引き取ってくる。

 家中に抜け毛をまき散らし、人が来ると吠えかかり、インターホンの音で興奮して吠えまくり、掃除機が嫌いでかみつき、晩年には、家中で排尿し、嘔吐した。
 これで我が家は、かで綺麗になる。人が訪ねてきても心配する必要もなくなった。医療費負担もなくなり、家計が助かる。

 そうは思う。が、それでも一抹の寂しさはある。

 保存写真を調べた。リンが、リンだけで写ったものが2枚あった。妻がプリントしろという。さて、サイズをどうしようかな?
 これから作業にかかる。

 

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