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 2010年2月2日 雪

 「雪だよ」

 朝、横浜の瑛汰から電話があった。横浜も積雪したらしい。

 「じゃあ、瑛汰、雪だるま作らなくちゃ」

 世の中の通常の会話は、この程度に当たり障りがないものである。が、瑛汰の反応はやや違った。

 「あのね、瑛汰、おにぎりつくってんの」

 雪でおにぎり。瑛汰、食べ盛りの3歳半である。

 桐生も昨夕6時頃から雪になった。夜、飲み会の約束があった。約束した以上、雪が降ろうと爆弾が落ちようと出かけるのが私である。それが世の中の決まりである、と疑いもせずに信じている。車で出かけた。帰りは運転代行を頼むつもりである。

 「降ってきたねえ。運転代行、やってくれるよね」

 店主に何気なく問いかけた。

 「えっ、お客さん、車なんですか? 雪が降るとねえ、運転代行の車両がうんと少なくなるんですよ。早じまいをするところもあるし」

 こちらはこれから飲むところである。早じまいなんぞされた日には腰を落ち着けて飲めないではないか。外を見た。

 「この程度の雪で車、早じまいする?」

 店主も外を見た。

 「うーん、最初は雨だったしね。この程度の雪なら車を運転できないってこともなさそうだから大丈夫でしょう」

 安心して飲み始めた。生ビールをジョッキに2杯、熱燗に替えて2合徳利を2本。

 「もう飲まないんですか?」

 途中から加わった女性が言った。この日の飲み相手がこの女性との約束を忘れていたらしい。彼女からかかってきた電話で話していた彼が言った。

 「ここに呼んでもいいですか?」

 若い女性が来る。私に否があるはずがない。二つ返事で了解した。なんでも、幼稚舎から慶応に通った才媛らしい。まあ、どうでもいいが。

 「もう2合徳利2本飲んだからね。しかも、私1人で。そろそろ、と」

 やんわりとお断りした。が、どういう訳か、その程度の返事では引き下がってくれない。私を酔わせてどうしようってか?

 「お強そうじゃないですか。もう1本?」

 警戒心なのか、関心なのか、いくらか心がざわめいた。が、と若い女性に迫られると、拒絶する言葉を忘れるのが私の悪い癖である。彼女と会うことなんて2度とないはずなのに。

 「じゃあ、あと1本だけ」

 運ばれてきた徳利から酒を飲み始めたときだった。

 「運転代行、もう受け付けやめたんだって」

 別の席で飲んでいた女性がいった。この女性も運転代行で帰るつもりだったらしい。

 「私が最後だって」

 えーっ、そんな……。

 「すいません。私も代行を頼んでくれます?」

 まだ酒はたっぷり残っていた。しかし、そんなことを言っている場合ではない。雪でこの店に閉じこめられたらことである。床暖房が入っている我が家と違って、この店、何となく寒いし。
 店を出たのは9時半頃だったろうか。雪の降りしきる中、無事に自宅まで送り届けてもらった。1400円なり。

 今朝、その車を見た。屋根に3cm ほど雪が積もっている。うーん、このままじゃ走れないな。
 手で雪かきしてみた。すぐにかじかんでくる。タオルを持ち出してやってみた。下の方は凍り付いているらしく、雪はなかなか動かない。無理に動かせば傷が付く恐れがある。どうする?

 ふと思いついた。そうだ、ここは札幌じゃないんだ。桐生である。だったら……。

 水道ホースを伸ばして水をぶっかけた。たちまち、ではないが、雪は少しずつ溶け、車の屋根から滑り落ち始めた。札幌ではないから、ぶっかけた水が凍り付くこともない。作戦成功である。

 間もなく、車から雪がなくなった。そこまでは良かった。が、雪がなくなった車を見て、もう一つ仕事ができたことに気がついた。水滴を拭きあげねばならない。放っておくとシミができる。

 何のことはない。洗車をしたようなものである。一昨日の日曜日に洗ったばかりだったのに……。

 自然は偉大である。わずか2日前に車を洗ったばかりの人間の思惑なんて完全に無視する。勝手をしてくれる。
 どこかの偉い人が言ってたな。自然に帰れ、って。
 だが、できることなら、私は自然には帰りたくない。
 妙に哲学的になってしまった雪の朝であった。

 あっ、今日も書いちゃった。

 

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