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 2010年3月5日 麻雀と寿司

 昨夜、いや今朝方かもしれないが、奇妙な夢を見た。

 場所は、昨春までいた東京の勤め先である。私、あそこに顔を出すのは嫌いなのだが、何故かそこにいた。
 おまけに、あろう事か、スーツを着ている。現役時代最後の10年間、ほとんどスーツは身につけず、自主的にカジュアルウエアで通していたのに、不可思議である。しかも、ネクタイまできちんと結んでいる。
 おかしい。私の美学に反する。ま、相手が夢では文句も言えないが。

 さて、嫌いなところに何をしに行ったのか、よくわからない。多分、その用件が済んで帰ろうとすると、

 「おお、安堂君じゃないか」

 と声がする。見ると、20年以上も先輩のMさんだ。ええっ、何でこんな人が?
 Mさんは、人に紹介してもらった地元の先輩で、入社前にお世話になった。入社が決まったときは、当時Mさんが赴任していたい松山まで挨拶に行き、道後温泉と松山の酒、美味を楽しませて頂いた。
 でも、何故Mさんが? もうとっくに80歳を超えているはずだが、見たところ、まだ40前後。しかも、パリッとしたスーツ姿である。生地は光沢のあるグレー。あまり上品ではない。私、Mさんのスーツ姿って、確か見たことはなかったが、俺、Mさんをこんなカテゴリーに分類して記憶しているのだろうか……。

 「安堂君、丁度良かった。メンツが1人足りなくてさ」

 見ると、麻雀卓がある。職場に麻雀卓。不思議な組み合わせだが、何故かその場にとけ込んでいる。私の会社、どうやらまともな会社ではない

 すでに2人が座り、ゲーム開始を待っている。これからMさんも座るところだ。

 「いや、あの、私、麻雀はもう15年以上やっていませんし、ちょっとこれから行くところもありますので」


 及び腰でお断りした。もう、麻雀の役もよく覚えていない。カモになるのはまっぴらごめんである。

 「何を堅いこといってるんだ。ほら、座って、座って」

 大先輩にそこまでいわれたら、お断りするすべはない。しかし、俺、Mさんと麻雀をしたことなんかなかったけどな……。

 仕方なく座った。
 麻雀はまず、牌をかき混ぜるところから始まる。かき混ぜようと卓に手を伸ばした。
 卓の上には麻雀牌ではなく、お寿司が並んでいた。

 いや、目が覚めたあとなら、そんな馬鹿な! と思う。しかし、不思議なことに夢の中では、何の不思議さも感じない。2段に積まれ、4列に並べられた牌は、すべてお寿司なのである。海老、ウニ、イクラ、コハダ、エンガワ、マグロ、トロ……。

 麻雀では、2段に積まれた牌を、2組づつ自分の手元に持ってくる。普通の麻雀牌なら、さほど困難な作業ではない。だが、牌がにぎり寿司になると困難を極める。落とさないように少し力を入れると崩れてバラバラになってしまう。力が足りないと、取り落としてやはりばらけてしまう。やっと運んでこれた、と思うと、もとあった場所にご飯粒がくっついて残っている。それを一粒ずつ拾って口に運んだりして、いや、大変である。

 ゲームを始めても、大変だった。持ってきた自分の牌が、何故か卓の上に並べられない。仕方なく牌を、というよりお寿司を両手で持つ。両手に乗ったこの牌で勝利を目指して戦わねばならない。

 麻雀牌には、数字がある数牌と、字しか書いてない字牌がある。数牌があるから、平和(ピンフ)や断(タン)ヤオという役があり、メンタンピン(面前、つまり手牌をさらしていない、で断ヤオで平和が完成した、ということ)で上がるのを基本中の基本とする。
 
 ところが、なにしろ牌がお寿司なものだから、裏返しても数字は書いてない。裏返して見えるのは真っ白い米粒の集合である。ということは、麻雀牌でいえば、字牌しかないということである。しかも、その牌が海老であるのか、ウニであるのか、トロであるのか、はたまた鯛であるのかは、誰でも一見してわかる。
 これでどうやってゲームをするの? とは夢の中では露ほども思わない。自分の牌がすべてのプレーヤーにわかる状態で、ひたすら上がりを目指すのである。

 「よし、七対子(チートイツ)にするか、いっそ四暗刻(スーアンコ)を狙うか」

 私の手牌をすべてのプレーヤーがわかっている状態で、そんなことができるかどうかなど毛頭頭に浮かばない。ひたすら勝利を目指して役を作る。

 そのうち、大変なことに気がついた。私の手のひらにある牌の数が多すぎるのである。麻雀では、14の牌を自分の手元に取り、うち1枚を場に捨てる。常に自分の手元にある牌は13である。
 ところが、我が両手に乗るお寿司を数えたら、なんと17個もある!

 やばい! 夢の中でもそう思った。多すぎる牌を手元に置くのは多牌(ターハイ)といって、罰則の対象なのだ。

 「いけない。何とかしなければ」


 瞬時考えた私は、素晴らしい解決法を思いついた。

 「食べちゃえ!」

 かくして私は、できるだけ口元が他のプレーヤーに見えないように体を丸め、手にあった巻きずし3個を口に頬張り始めた……。

 そこで目が覚めた。目が覚めて、あれっ、卓の上にあったのは、確かにぎり寿司ばかりだったのに、いつの間に巻きずしが紛れ込んだのだろう? と不思議な思いにとらわれた。
 不思議なのは夢全体なのに、まだそこまでは思いが至らない。どうやら、私は細部にこだわるタイプらしい。


 完全に目が覚めて、でもくっきりと記憶に残った異様な夢を思い返した。私、なんであんな夢を見たんだろう?

 そういえば、今日は健康診断に行く日だった。前日の夜は暴飲暴食を避け、食事は9時までにすませること。当日朝は食事をせず、タバコも吸わずにくること、との注意書きを、昨夜寝る前に読んだ。

 それでか?
 朝飯が食えないから、麻雀牌まで食べ物に、しかもしばらく食べていない寿司にしてかぶりついたのか?

 だとすれば、私は天才である。世の中の誰が、麻雀牌を寿司にしてしまうことなど思いつく? 天才である私以外にないではないか!

 それとも私は、単なる食い意地の張りすぎたオヤジにすぎないのか……。


 で、健康診断。とりあえず、血圧が高い。

 144 ― 93。

 医者は、

 「そろそろ降圧剤が必要かもしれません」

 といった。
 私は、

 「薬は飲みません。何とか自力で下げます」

 と突っ張った。
 こうなったら、気温が高い日は汗が出るから散歩は中止、などとはいっていられない。汗を絞り出しながらでも歩かねばならない。

 1年後の正常血圧、体重3kg減を実現するぞ!

 と、とりあえず今日は、固く心に誓う私であった。

 

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