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 2010年5月9日 吉里吉里人

 を少しずつ読み進んでいる。布団に入って寝る前、湯船に浸かりながら、リクライニングチェアに寝そべって、食事をしながら、トイレでの孤独な時間を癒すため、と読む場所は様々だ。
 これほど熱心に読んでいるのに、しおりがさっぱり先に進まない。現在は172ページと173ページの間に挟まっている。全体が834ページだから、まだ2割しか読んでないわけだ。そういえば、本の帯に

 「井上ひさしの全技法を投入した二千五百枚の畢生の大作

 とあった。確かに分量は大作である。なにしろ、全体の2割まで読んでも、吉里吉里国独立という事件勃発から半日ほどしかたっていない。凄い。

 だが、たった半日の内に東北の人口4000人少々の村が日本から独立を宣言し、その時たまたま吉里吉里国内にいた「日本人」はパスポートなしで他国に入った不法入国者として収容所に入れられ、一方で吉里吉里国はNHKを使って独立を日本国に宣言する。そんな騒ぎの中、村ではラーメン屋のオヤジが殺される不可思議な事件が発生、どうやらこれは日系4世、子連れで美貌のハワイ人ヌードダンサーの仕業らしい。
 マスコミも動きだし、日本国も動き出す。のっけから自衛隊が出動、戦車を国境線まで進め、ヘリを吉里吉里国領空の送り込んでペンキを撒くという戦闘行動に出る。見た目が日本人とそっくりの吉里吉里人を日本人と区別するため、ペンキで色を付けるという作戦らしい。
 日本の戦車のキャタピラを爆破して動きを止めた吉里吉里出身の自衛隊員が英雄として吉里吉里国に迎え入れられ……。

 172ページまでは、ざっとこんな具合である。

 この荒唐無稽のお話に、井上さんは様々なテーマを乗せる。

 言葉の問題。吉里吉里国の国語はズーズー弁である。その立場から、人工的に作られた言葉である標準語の問題点を撃つ。
 日本の農政も嘲笑の対象だ。一貫性に欠けた戦後の農政で振り回されたことに嫌気がさしたのが、吉里吉里国独立のひっつの理由なのである。
 表現の自由も俎上に登っている。吉里吉里国では、ヌードダンサーがアイドルなのだ。しかも、一部を隠したヌードではなく、すっぽんぽんのヌード、ヘアヌード、それにその奥にある割れ目までさらすのがこの国では当たり前なのである。人間の体に備わっているものを何故隠す?
 メディア、特にNHK、それにお偉い学者も笑いの対象だ。紋切り型の発想しかできないあんたら、それでいいと思ってんの? まあ、紋切り型だから放送は垂れ流せるし、学界の重鎮にもなれるのだろうけど。ん? 井上さん、あんたの出世作って、NHKの「ひょっこりひょうたん島」ではなかったか? まあいいけど。

 多分、残っている8割でも、井上さんは様々なテーマを問い続けるのだろう。的は日本という国、日本の社会である。いろんな事が当たり前として通用しているが、それらって本当に当たり前なのか

 この大作を通じて井上さんがやりたかったのはそういうことなのに違いない。

 にしてもだ。一度は読んだ本なのに、これほど綺麗さっぱり中身を忘れているとはどういう事だ?
 私の問題なのか、それとも読書とはそもそもそういうものなのか。
 綺麗さっぱり忘れるために30年ほど前に投じた1900円。それだけのお金を支払った価値がるのか、ないのか……。

 

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