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 2010年6月9日 さぼり!

 と、どこかの読者はお怒りになっているかも知れない。
 いや、確かに、ずいぶん長い間、新しい原稿を書かなかった。それはお詫びする。だが、決してさぼっていたわけではない。

 「今日にも生まれるかも知れないんだって」

 我が妻殿が、私はもう聞き飽きてうんざりしている素っ頓狂な声をあげたのは、金曜日の午前9時過ぎである。横浜の次女から電話で伝えられたらしい。

 今日にも生まれる。それは一大事である。いや、生まれることが一大事なのではない。次女の元には、瑛汰というやんちゃ坊主がいる。旦那は仕事に出かけている。瑛汰と2人でいるときに産気づいたらどうする? 産院に駆けつけるのはタクシーでもよい。でも、その時瑛汰をどうする? まさか、連れて行くわけにはいかないだろう? これは、仕事を休んででも駆けつけるしかないではないか。

 と私は論理的に考える。ところが、妻殿はそうでもない。

 「何か、夜にでも来てくれたらありがたいっていってたんだけど……」

 まったく、妻殿といい、次女といい、奴らの頭脳構造はどうなっているのだ? 1時間後の産気づくことだってあるというときに、夜にでも来てもらえれば、行ってあげれば、というのはまったく論理的ではない。それまで持つと、誰が保証するのか?

 「仕事は休む。すぐに横浜に行くぞ」

 論理的思考ができない連中には命令を下すしかない。こちらは定年後の仕事である。その程度の自由はきく。

 「ちょっと待って、準備をするから」

 さすがに、この日だけは素直に命令に従う意向を見せた。それでよし。

 「まだか?」

 声をかけたのは11時半である。横浜行きを決めてから、すでに2時間はたっている。一刻も早い出立が必要なときに、何をぐずぐず、と私は思う。妻殿は思わない。旅立つ前に必要なことをしていると、これだけの時間がいるのだという。
 どうでもいいことは省けばいいものを。

 結局、桐生を出たのは正午過ぎ。途中で昼飯をかき込んで、午後2時過ぎには横浜に着いた。
 こうして日曜日の昼過ぎまで、私は横浜で囚われ人となり、もっぱら瑛汰の守り役を仰せつかった。

 何故か瑛汰が関心を持つiPadを見に、川崎のヨドバシカメラに出かける。ついでに玩具売り場をのぞき、巨大な水鉄砲、人に当たっても危険ではない鉄砲を買う。

 「ママに内緒でアイスを食べたい」

 という瑛汰と、川崎の地下街でソフトクリームを食べる。ママの命令に従って瑛汰と昼寝をする。お風呂に入る。公園に遊びに行く。

 まあ、瑛汰が目覚めているうちは、私にも使命がある。楽しいかどうかは別として、やらねばならないことがあり、時間がつぶれる。
 ところが、夜、瑛汰が寝ると、トタンに私にはやることがなくなる。私のパソコンはない。かといって、テレビを見てもつまらない。それどころか、居間に私の居場所がない。やむなく、私の寝室となっている1階の部屋に降りるのだが、ここには何もない。仕方なく布団に横になって本を読む。でもねえ……。

 かくして日曜日午後、瑛汰に添い寝して瑛汰が眠り込むと、ほうほうのていで1人桐生に引き上げた。妻殿は横浜にいて、次女一家の家政婦を務める。次女が入院すれば、これに子守も加わる。

 私は日曜夕から、桐生でひとり暮らしに入った。

 桐生に戻り、まず点検したのは冷蔵庫である。なにしろ、これから当分の間、自分で食事を作らねばならない。

 冷蔵庫を見て、その日の夕食のメニューを決めた。
 野菜炒めとところてん、キャベツ蒸し(ビタクラフト使用)でビールを飲み、あとご飯で仕上げる。それにしても、足りないものがある。すぐにヤオコーに出かけた。
 豚バラ肉、もやし、を購入。朝食用にアジの開き、鰯の丸干し、それに翌日の夕食用にステーキ肉(1000円が4割引!) も。

 自宅に戻り、夕食の支度を始める。冷蔵庫を覗くと、ところてんと思ったのはゼリーであった。
 それに、キャベツ蒸し? 野菜炒めでも大量にキャベツを食べるよなあ。
 というわけで、ビールの友は野菜炒めアジの開き半身。それに黒川ハムが少し残っているので、その程度にしようとコースを変更。
 風呂をすませて調理にかかり、6時から龍馬伝を見ながら夕食。

 翌朝はご飯とみそ汁(煮干しだし、なす、もやし、揚げ)、鰯の丸干し、漬け物、がね漬け(九州の食べ物で、我が家では私しか食べない。横浜でも手に入らず、ということは桐生などでは絶対に手に入らず、九州から取り寄せている)の朝食。
 ま、この程度ならなんとでもなる。

 昼は外食、寿司。

 夜はステーキ、のはずだった。ところが夕方急に仕事が入り、気がついたら6時過ぎ。これから夕食の支度をするのは億劫だ……。
 と考えていたら、ふと思い出した。そうだ、今日はメタボ教室に誘われていたんだ。

 誘ってくれたのは、見るからにメタボの友である。さすがに自分の体型に疑問を感じたらしく、

 「ねえ安堂さん、公民館でメタボ教室があるんだけど、一緒に行かない?」

 と数日前にいっていた。

 「終わってから飯を食おうよ。教室に通う意味はなくなるかも知れないけど」

 うん、メタボ教室に行こう。そうすれば、今日は夕食を自分で作らなくてもすむ。

 ここは正確にご理解頂きたい。
 私は、己の体型にあきれ果ててメタボ教室に歩を運んだのではない。教室に参加して多少の汗を流せば友と食事ができる。自分で夕食を作る必要はない。それが動機である。
 くどいようだが、己の体型に嫌気がさしたのではない。

 7時から始まった教室は、30分ほどの座学のあと、実技に移った。
 ストレッチ、腹筋、背筋、腰の筋肉の強化運動、ウォーキング、スキップ、足を後ろに振り上げて、そのままの確度で前に回す不自然な歩行、前に振り上げた足しをそのまま後ろに回して後退する、さらに不自然な歩行。
 たっぷり1時間汗を流した。

 「安堂さん、あなたが一番体が柔らかいですねえ!」

 ストレッチの最中、先生に褒められた。
 周りを見回した。30代である知人が1人。40代? 50代? という人が2、3人。あとは、どう見ても私より年上の方ばかりである。中には、歩くことすら不自由そうで、

 「えっ、まだ生きてます?」

 といってしまいたくなる人もいた。
 その中で、体が一番柔らかいって褒められてもなあ……。

 予定通り、そのあとは、誘ってくれた友と食事に行った。生ビールは大ジョッキ2杯と中ジョッキ1杯。ニシンの塩焼き、キュウリとタマネギの梅肉和え、冷や奴。友人からは、かき揚げの差し入れ。

 「いいよ、せっかく汗を流したんだから、油ものは食べたくないよ」

 「いいから。美味いんだから」

 かくして、その4分の1も我が胃袋へ。もちろん、4分の3はその友人が食べた。

 本日午後、その友人から電話があった。

 「ねえ、体重、どうなった?」

 いや、特に計ってはいないけど、あなたは?

 「やっぱ、終わって酒飲んで、食べたじゃない。500g増えててさ」

 油にまみれたかき揚げを4分の3も食べた報いである。

 そうえいば、その店で。

 カウンターの端に夫婦がいた。飲食店を経営しており、その日は店が休みなのだそうだ。2人の会話が年齢の話になった。

 「何いってんの。俺なんか61よ。あんた、俺よりずっと若いじゃない。何老け込んでんだよ」

 ふと言葉を出すと、奥さんがいった。

 「嘘でしょ」

 いや、正確に言ったんだけど。

 「40代の方だと思っていたんですが」

 彼女の旦那、つまり彼女の隣にいた男性は、確か50ウン歳、といっていた。
 えっ、こんなに髪が白くなったのに、まだ40代に見てくれる? じゃあ、30歳の女性と腕組んで歩いても違和感ないよね!

 私1人が浮かれた飲み会だったかも知れない。彼らの店に近々おじゃまするという約束をして別れた。

 昨日の朝。
 目覚めて気がついた。ご飯がない!
 前日夜、ご飯を炊こうと思っていたのに、外食になった。自宅に戻ったときには、40代の言葉に舞い上がってご飯を炊かなきゃという思いはどこかにすっ飛んでいた。

 で、ご飯がない。どうしよう? デニーズまで食べに行くか? でも、気が進まないなあ……。

 インスタント焼きそばにした。キャベツともやしとピーマンを大量に入れる。唐辛子を派手にふりかけて、まあ、お腹はできた。

 昼。桐生で思いつくのは、うどん、そばである。自宅の近くにはスパゲティの店もある。だけど、朝が焼きそばだ。昼も麺類というのはいかがなものか。寿司は前日に食べた。じゃあ、何にする?
 と思いながら市内を車で回った。ない。入りたい店がない。

 さんざん迷って、結局は弁当屋さんへ。
 弁当屋さんって、油ものが多い。それも避けたい。メニューとにらめっこして、黒酢酢豚弁当、490円。自宅に持ち帰り、日本茶を入れて食す。

 夜は、誘ってくれる友がいた。

 「安堂さん、繊維関係の人と勉強会をやって、夕方から懇親会をやるんだけど、懇親会だけ出ませんか?」

 えっ、いいの? 俺、まったく畑違いだけど。

 「いいですよ、あなたなら。誰かに誘われた、ってことで」

 出た。冒頭に挨拶をさせられ、乾杯の音頭まで取らされた。

 「いま桐生に必要なのはお金持ちです。皆さん方が事業に成功され、お金持ちになられることを。できれば、おこぼれが私にも回ってきますように。乾杯!」

 私、桐生の一部の方々からは愛されているらしい。

 2次会まで行って、10時半に帰宅。前日の轍を踏まないよう、酔眼で米を3合とく。水を張って電気釜にセット。寝る。

 やっと話が今日まで進んだ。

 目覚めたのは6時。思い立って散歩に出た。いろんな騒ぎで散歩も途切れていたからなあ。
 歩きながら、

 「あれっ?」

 と思った。米をといだのはいい。でも、といだ米はざるにあげて水を切っておかなくっちゃまずいんだよなあ。やばい。一晩水につけっぱなしだよ!

 というわけで、今朝は

 ご飯:無事炊けていた。食べた残りは、ある程度さまして1食分づつラップ、冷蔵庫で保存。
 みそ汁:具を変えようと思ったけど、冷蔵庫を見たら、半分になったなすが入っていて、ああ、早く食べなきゃと。それに、もやしも早く食べないと傷むし。目先を変えようと、この2つに加え、ネギを入れて仕上げは冷凍保存した揚げ。
 春菊:朝からゆがき、鰹節をかけてポン酢。残りは1食分づつ分けでラップし、冷凍庫へ。食べるときに解凍する。
 漬け物
 蟹漬け

 まあ、普通の暮らしに戻った。

 昼は大衆食堂に出かけ、鯖みそ煮定食。サラダ付き、ご飯を半分にしてもらって730円。

 夜はステーキ。それにジャガイモを1個レンジにかけ、ニンジンもレンジで熱を通して添えた。サラダは大量のレタスと、冷蔵庫の中でしなびかかっていたトマト、それにキュウリを加えて市販のドレッシング。
 締めに、ご飯ととろろ昆布に湯をかけて吸い物にし、漬け物、蟹漬け。

 ひとり暮らしも3日目、いやもう4日目に入ったか。

 人間、衣食住というが、まずは食である。とにかく、食わなきゃ生きていけない。生きているから寒さも感じる。お洒落もしたくなる。生きているから屋根のあるところで寝たくなる。
 まず、
 
 とりあえず、順調である。
 しばらくは、食生活のレポートが続くかも知れない。

 

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