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 2011年3月8日 本棚

 今週末は横浜に戻る。13日日曜日、妻殿の母の米寿の祝いをするのだそうだ。
 日曜日に昼? だったら、俺は出ないわ。だって、酒を飲んだら車に乗れない。であれば、桐生に戻れない。月曜日は仕事である。俺が行けるわけないだろ?

 そもそも、どうして土曜日の夜にやらないのだ? それなら、酒も飲める。一晩を横浜で過ごして、日曜日に桐生に戻ればよい。そもそも、日程の設定がおかしいぞ!

 「だって、弟は土曜日も夕方まで仕事だから出来ないでしょ」

 それなら、俺も仕事だ。

 「お昼なんだから、酒を飲まなきゃいいでしょ?」

 酒抜きの祝い事なんて、日本であり得るのか?

 と、抵抗はしてみたが、いかんせん弱い立場である。不本意ながら参加せざるを得なくなったのだ。しかも、挨拶までするのだそうだ。え、身内だけの食事会で挨拶? 
 主催者の感覚と私の感覚は180度違うが、まあ、これも従うしかないか。
 

 「ボス、来るの?」

 私が横浜に行くのを最も喜んでいるのは、瑛汰である。

 「ボス、来るんだよね。あのさ、瑛汰、お願いがあるの」

 何だ?

 「ボス、本棚を作ってよ」

 本棚?

 「瑛汰ね、ハワイでスターウォーズの本をいっぱい買ってきたの。本棚に入れなきゃいけないでしょう。だから、瑛汰、本棚が欲しいんだ。ボス、作ってよ」

 ボスに頼めば何でも作ってくれるって瑛汰は思っているのよ。そばから妻殿がいった。なるほど。そこまで信頼されているか。
 それに瑛汰は、私との大工仕事を全身で喜ぶ。瑛汰用の机と椅子を作ったとき、のこぎりと金槌を持ってそばを離れなかったのは、瑛汰である。その後、巻き取り式のメジャーは、瑛汰の大事な生活必需品となった。あらゆるものにメジャーをあて、

 「はい、13.5ですね」

 と得意げに言った。何を測っても、長くても短くても

 「13.5です」

 だったのは、ご愛敬である。

 「分かったよ、瑛汰。じゃあ、ボスがいったときに一緒に作ろう、本棚を」

 「ボス、約束だよ」

 というわけで、12日の私の行動は決まってしまった。朝出来るだけ早く桐生を出て横浜に向かう。着いたら瑛汰を伴い、島忠に向かう。ここで、適当な板材を選び、カットしてもらう。車に積み込んで戻り、木ねじで止めて本箱に仕立て上げる。無論、瑛汰が手伝う。

 最近、家具店にある本箱は、おおむねがパーチクルボード製だ。見た目はそこそこなのだが、弱い。本を詰め込むと棚板がしなる。そのうちねじ穴が甘くなって、数年すると使えなくなる。自分で、しっかりした材料を選んで作るに越したことはない。

 となると、こちらから作業道具を持っていかねばならぬ。木の表面を磨くのにサンダーは必需品である。木ねじで止めるとなると、ドライバーもいる。木ねじの頭を表面に出さないためには、木釘を打ち込まねばならないが、そうなると、出っ張った部分を切るための鋸も必要だ。
 ふむ、かなりの大荷物になるわい。
 ヘルニアが出ている身体で頑張らなくっちゃ。


 昼食のあと、何か歯に挟まっている感じがした。爪楊枝でほじくっていると、突然、何か固いものが剥がれ落ちてきた。

 「えっ、歯が欠けた?」

 と普通なら思う。私も普通なので、そう思って慌てた。
 剥がれ落ちたものを検分した。安心した。どうやら、歯が欠けたのではなく、歯にかぶせたカバーの一部が割れてはげ落ちたものらしい。
 といって、安心ばかりはしていられない。剥がれ落ちたところにはくぼみが出来ている。そこに、食べ物の残り糟が残留するようになっては虫歯のもとである。
 それに、第一、美容上問題がある。明眸皓歯(めいぼうこうし=ぱっちりした明るい瞳と真っ白に輝く歯)は美の条件である。私の目がパッチリとせず、糸を引いたように小さいとしても、私の歯が、タバコで黄色くなっていようと、明眸皓歯になりたいと願い続けるところに美は存在する。

 というわけで、かけ落ちたかぶせものの破片を持って歯科医に駆けつけた。

 「ははあ、欠けてますね」

 いや、だから駆けつけたのである。

 「これですか。どれどれ。あ、これ、ちゃんとはまるわ。じゃあ、これでいいな。ちょっと、リペアキット持ってきて」

 歯科医は、何やらシンナー臭のする接着剤で、欠け落ちた破片を元の場所に接着した。

 「ま、ここは弱くなっていますから、いつまで持つか分かりませんが、とりあえずこれで様子を見ましょう」

 診察室を出て待合室で本を読んでいた。

 「安堂さん」

 と呼ぶ声がする。窓口に出向くと

 「はい、では今日は1520円です」

 ということは、あれか? 自己負担3割とすると、この治療、「とりあえず」「様子を見る」ための治療費は5000円?
 ふむ。

 ま、とりえず、美容上の問題も解決したから、いいとするか?

 

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