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 2011年3月23日 家族

 長男が。震災地域に行くことになった。会社の命令である。
 長男の勤める会社のサービスを、被災地の人たちに役立てもらうのが目的の1つ。時間にゆとりがあれば、避難している人たちの手伝いもしてくるのだという。

 被災地の人たちに役立つことをしたいと思いながら、せいぜい、減り続けるガソリンを横目で見ながら、

 「給油の列には並ばない。ガソリンがなくなったらタクシーで移動する」

 程度のことしかできない私にしてみれば、羨ましい仕事である。困っている人たちの役に立つために現地入りする長男を羨ましく思い、誇らしくも思う。

 「でさ、お前、防寒衣料は充分か? えっ、会社が買ってくれるって? なるほど、会社の指令で行くのだから当然か。でも、緊急用の食料と貼るカイロは持っていった方がいいぞ。うん、うちにある物で必要な物は全部送ってやるから、気がついたらいってこい」

 と電話で話しながら、ふと思う。

 これって、70年前に始まった戦争に、息子を送り出した親の心情と、どこか相通ずるところはないか? 
 あのとき、招集恋情をもらった子供の親も、私と同じように、

 「日本の危機を乗り越えるために息子が役に立ってくれる」

 と誇らしく思いながら送り出したのではなかったか?

 まあ、我が長男は兵士として出向くのではない。宮城県か岩手県が目的地で、滞在期間は1週間から10日。原発から離れている地域だから、危険はない。

 それなのに、70年前を思ってしまう。どこか、底の方で繋がっている感じがして仕方がない。
 私の創造力は飛翔しすぎているか?


 今春大学を出るはずの甥っ子の就職がダメになったという。

 「えっ、お前、内定してたんじゃなかったっけ?」

 はあ、そうだったんだけど、卒業論文が通らなくて、卒業できなくなってしまって。卒論の面倒を見てくれた先生はこれでいいといってくれたんだけど、それが最終的には通らなくて。うん、半年大学に残って卒論を書き直さなくちゃいけないんで、就職がダメになって。

 何とも要領の悪い奴である。私は要領の悪い奴を嫌いではない。要領がよすぎるやつより、はるかに好きである。だけどなあ、お前……。

 最初の電話はそれで切った。切ったあと、あれこれ考えた。いかん、そんなことをいっても本人の役には全く立たない。自分のドジさに一番打ちのめされているのは本人である。そいつに

 「お前はドジだなあ。ドジなやつは可愛いけど」

 といってみたところで、屁の突っ張りにもならない。

 電話をかけ直した。どんな卒論を書いたのか聞き出して、それを送るようにいった。私に添削が出来るのなら添削をする。さらに調査が必要だと判断すれば、再調査と書き直しを命じる。まずは、甥っ子を卒業させねばならない。その先の就職は、私には手伝えない。
 それにしても、この甥っ子、あちこちに頭をぶつける人生を送っている。今年25歳。こんな歳まで大学にいるのが、頭をぶつけまくった証である。

 「頭をぶつけまくったことが自分をどう育てたのか、じっくり考えろ。お前は、ふわふわと世の中に出ていく連中と何が違うのか、時間をかけて練り上げた自分の売りは何なのか、を明確にしろ。そうでなくては高齢就職は難しいぞ」

 と電話口でいいながら、でも、私には甥っ子を助けるすべがないことを何度も自分で確認した。
 彼は、彼の力で自分の人生を切り開くしかない。

 人生、頭をぶつけることが多ければ多いほど、酷と深みが出るはずである。それを評価する人間は必ず現れる。そう思いたい。


 そういえば、私は大学受験を目指した高校時代、半紙に

 「艱難汝を玉にす

 と書いて机に前に張っていた。
 ま、私が玉になったかどうかは、いまだに分からないことだが。

 甥っ子の健闘を祈るしかない。

 

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