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 2011年6月19日 勉強の3

 週末、よんどころない事情で横浜に戻った。瑛汰と一夜をともにした。

 「瑛汰君と寝るぐらいなら、私とも!」

 と声をかけていただける見目麗しい女性の登場を心から望む。
 
 このところ瑛汰は、すっかり勉強にはまっている。今日は朝から川崎のラゾーナに出かけ、またしても図鑑を買わされた。今日のは確か、比べる図鑑だった。1週間前には、何でも1番の図鑑を買わされた。
 本屋に入り、脇目もふらずに図鑑の売り場に直行し、図鑑を見る瑛汰は頼もしい。今日は、事前には恐竜の図鑑を買うはずだったのが、現場で比べる図鑑に変わった。可愛い心変わりである。

 という、向学心豊かな子供がいるのに、放射線を解説した本を要約した前回、前々回のアクセスは低迷している。が、めげずに、

 「正しく放射線を怖がるためには、放射線を知らねばならない」

 という押しつけがましい理屈で今日も続ける。

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 第4章 低線量の危険と発がん機構

 一番気になる放射線被曝と発がんとの関係である。放射線に曝されれば曝されるほどがんになる危険が増すという専門家もいるが、著者は違うという。
 著者の考え方の基本にあるのは、前回掲載した被曝と遺伝の関連を調べた表である。この表は原爆で放射線を浴びた人と浴びていない人を比べたもので、「対照」というのが浴びていない人、「被曝」というのが浴びた人のその後である。確かに、遺伝性のがんについては差がない

 がんは、がんを起こす因子が細胞に突然変異を起こすことで始まる。そこにがん化促進作用を持つ物質が働きかけ、がん化した細胞に増殖(分裂)の刺激を与え続けるため、やがてガンが発症すると考えられる。この促進作用を持つ物質の投与をやめると、細胞は元に戻るからである。促進物質を与え続けると、突然変異を起こした細胞の中から増殖力の強い細胞が現れ、促進物質がなくても増えるようになってがんが発生する。

 がんを抑える遺伝子のひとつにp53遺伝子がある。細胞ががんになるには、複数のがん遺伝子とがん抑制遺伝子の変化が必要らしい。p53遺伝子は、悪性腫瘍(がん)の中で、最も高頻度に異常が発見されている。逆に言えば、p53遺伝子が異常になるとがんになるといえるのかも知れない。

 現実に、このp53遺伝子を肺がん患者の患部に入れたところ、患者9人のうち3人の肺がんの進行が止まったという報告がある。

 自然発生でDNAの不良品ができると、身体はまず修繕にとりかかる。修繕しても傷がなおらない細胞は、アポトーシスで丸ごと殺してしまい、正常な細胞と取り替える。
 このような作用が人の身体に備わっているため、人の場合、受精卵の50%は自然流産死する。この場合、ほとんどのケースで染色体異常が見つかる。

 では放射線はどのような影響を及ぼすのか? 人では実験ができないので、マウスを使う。

 人体細胞は正常なp53遺伝子を一対持っている。これをp53(+/+)と表そう。このうちの1つが機能を失なったものをp53(+/-)と表し、2つともに突然変異が起きたものをp53(-/-)と書く。

 そこで、p53(+/+)のマウスに、妊娠9.5日でX線を200ラド=2シーベルト照射した。すると、胎児の60%が死に、20%が正常で産まれ、20%が奇形で産まれた。
 と書くと、やっぱり放射線は危険だとなりかねないが、注意しなければならないのは、奇形頻度20%というのは、X線を照射しない場合の奇形頻度と同じだということである。

 次に、p53(-/-)のマウスに、同じようにX線を照射した。すると、死んだ胎児は10%だけだったが、20%が正常で産まれ、何と70%に奇形が発生した。

 つまり、p53(+/+)はアポトーシスが正常に働いて、異常が起きた胎児が死んだのに対し、p53(-/-)ではアポトーシスがうまく働かず、不良細胞が生き残って奇形が大量に発生したわけだ。 

 どうでもいい話だが、人間の胎児もある段階までは尻尾がある。でも、ある段階まで来ると、これは人間には必要ない組織であると判断され、アポトーシスが働いて自爆装置のスイッチが入り、尻尾の細胞は消え去る。放射線を受けて傷ができた細胞がアポトーシスで廃棄処分されるのも全く同じ働きである。

 しかし、人間の身体とは不思議で、アポトーシスは細胞のほとんどが元気でも働く。細胞としては生命力があるのに、DNAの傷を見つけると働いてしまう。自分の健康、子孫の健康を保証するために細胞が自分を犠牲にする。

 放射線とがんの関係をマウスで調べた。

 マウスの背中の皮膚の一定部分に、1日おきに放射線をがんが発生するまで照射した。この実験だと、週300ラド=3シーベルトだと、100%がんが発生した。しかし、150ラド=1.5シーベルトでは全くがんの発生が見られなかった。

 マウスに放射能をもった水を飲ませ続けた。その放射線量が年間30ラド=300_シーベルトまでなら、リンパ腫の発生はなかった。200ラド=2シーベルトを超えると腫瘍ができた。

 ラットに放射性物質であるラドンを吸わせた。ラドンの濃度が0.4ラド/時=4_シーベルト/時を4ヶ月吸わせると、肺がんが有意に増えたが、その40分の1=0.1_シーベルト=100マイクロシーベルトを1年半吸わせても、ラドンを吸わない場合と変わらなかった。

 これらの実験結果から、総被曝線量(放射能を浴びた総量)が20ラド=200_シーベルトまでなら、がん発生の危険はゼロと見てよい、と著者はいう。

 また、皮膚の場合は毎週150ラド=1.5シーベルトでも発がんは起きていないそうだ。

 第5章 生物の進化と環境への適応

 この章は、30数億年前に地球上に誕生した生物がどのように進化してきたかをまとめたものである。だから、放射線と関係するところはそれほど多くない。面白いところだけ抜き書く。

 環境にある危険物の中で、最も毒性が強いのは酸素である。酸化するとは、錆びることだ。金属だけでなく、人間の身体を作っているものを酸化する。酸化すると、必要な働きができなくなる。

 「活性酸素が細胞を老化させる」

 という。だから抗酸化作用のあるものを取り入れなければならないといわれる。

 酸素がなければ生きものは生きていけない。呼吸で酸素を取り入れるから我々は生きている。でも、その酸素が、一方では毒。生きものとは不思議である。
 だから生きものは、酸素の毒を防ぐための様々な酵素を持っている。また、抗酸化作用があるビタミンE、カロチン、セレニウム、ビタミンC、尿酸などがサプリメントになっている。

 もうひとつの脅威は紫外線だ。ところが、紫外線はビタミンDをつくるためにはなくてはならない。太陽に当らないとビタミンDが不足して骨が弱くなる。 生きものとは微妙なバランスの上で生きている。

 人の祖先は森林から平原に出て、大量の紫外線を浴びるようになった。それに耐えた先祖だけが生き残ったおかげで我々がいる。生き残った先祖は、紫外線の毒を防ぐ機能を持ったから生き残ることができた。その能力は子孫である我々に受け継がれている。

 話は変わりるが、鼠を使った実験では、好きなだけ餌を与えた個体に比べ、腹7分目以下の餌を与えた個体は、寿命が延びるだけでなく、がんにもその他の老化の病気にもかかりにくくなる。

 微量の放射線は、生物に対し害を与えないで、生命の活動を刺激する場合が少なくないことが知られているという。放射線がホルモンのような働きをするという意味で、この現象をホルミシス効果、といいう。

 マウスにガンマ線やX線をわずかに照射すると、しばらくの間細胞の放射線に対する抵抗力が増加する。

 微量に被曝したマウスや金魚は、その後大量被曝すると、普通のマウスや金魚より生存率が上がる。

 人の血液でも同じ現象が起きる。

 放射線のホルミシス効果は、「生物の環境適応力」が放射線の刺激で上昇するため、と考えられている。著者はこう書いている。

「30数億年におよぶ進化の過程で、生物は多種多様な環境の危険に出会った。環境の激変で、生物種は、進化の途中で大半が死滅した。しかしまれには、危険を防御する機能と、新環境で生存する能力を獲得した生物が出現した。このような事件の繰り返しによって、生物の環境適応能力がだんだん向上して現在に及んでいる」

 リンパ球系の悪性腫瘍患者に、10ラド=100_シーベルト程度の全身照射を週に2、3回ずつ数週間行う。そのあとでがん部位に放射線を大量照射すると、治癒効果が上昇する。


 第6章 原発事故放射能にびくともしない人体

 1990年、東京で日・ソ放射線影響研究講演会が開かれた。この場で、生涯被曝量が35レム=0.35シーベルト=350_シーベルトを超す放射能汚染地区の住民は、綺麗な地区へ疎開させる基本方針を決めた。しかし、350_シーベルト以下の被曝量については安全である、という判断への批判は一つもなかった。

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 まず、あなたは90歳まで生きるとする。生涯被曝量とはあなたが90年間生きた結果受ける放射線の総量だ。それが350ミリシーベルト以下なら危険はないということに、学者の間から異論が出なかったということである。
 ということは年間3.9ミリシーベルトまでなら安全ということになる。 年間3.9ミリシーベルトということは、1日に0.01065ミリシーベルト、つまり10.65マイクロシーベルトまでは安全ということだ。
 各地の放射線量などが報道される。その数値を見るとき、
 「1日で10.65マイクロシーベルトを超えるのかどうか」
 に注意すれば、安全を保てるということになる。
 計算、間違ってないかな?
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 妊娠中の被曝で胎児に奇形や知能低下が起きるのは、数ラド以上の放射線を浴びたときである。1ラド=10_シーベルト以下では全く心配ない
 チェルノブイリの事故のあと、欧州各国での被曝線量は1年間の合計で0.2ラド=2_シーベルト以下だった。妊娠期間は10ヶ月だから全く心配はないのに、放射線パニックが起きて、多くの堕胎が行われたという。

 チェルノブイリの事故による放射性セシウムの汚染の最高値は、地面1平方メートルあたり150万ベクレルだった。人体が受ける影響はシーベルトに換算しなくてはならない。
 この地区の人たちが浴びた1年間の放射線量を計算した。その結果、外部被曝が1.5ラド、内部被曝が1.5ラドで、合計3ラド=30_シーベルトだった。
 れは胎児に奇形や知能低下が起きる危険がある被曝量だ。この地区からは疎開しなければならない。しかし、この被曝量は年間である。1ヶ月後に疎開すれば、被曝量はこの12分の1でしかない。落ち着いて行動すればすむ範囲なのである。

 中国広東省陽江県は大地の自然放射能が高いことで知られている。ここで70歳まで生きると、生涯被曝量は平均38レムになる。つまり380_シーベルトで、これは日・ソ放射線影響研究講演会が疎開を薦めた、生涯被曝量35レムより高くなる。
 38レムはあくまで平均値で、少ない人は35レム、多い人は52レムあった。
 学者は、この地区の人たちを調べた。その結果、この地区の住民の健康状態は、近くにあって地形や生活様式が似ている農村他よりよいことが分かった。

 まず、宇宙線を含めた外部ガンマ線による年間被曝量は、陽江県は0.21ラド=2.1_シーベルトだった。対照とした農村は0.077ラドと約3分の1だった。
 体内に取り込まれた放射性物質による年間の体内被曝は、陽江県で0.55レム=55_シーベルト、農村では半分以下の0.21レムだった。

 両方とも、人口は8万人。その中から、2世代以上住み続けている漢民族だけを対象にした。1970年〜1986年にかけての調査である。

がん発生部位

陽江県

農村

死亡数

死亡率

死亡数

死亡率

上咽頭

94

9.84

109

10.45

食道

13

1.4

16

1.49

53

5.6

47

4.44

肝臓

115

12.05

145

13.92

小腸

16

1.7

25

2.38

25

2.65

35

3.29

乳がん

7

0.75

13

1.25

子宮経口

13

1.37

5

0.45

白血病

31

3.02

33

3.39

骨肉腫

5

0.52

6

0.59

その他

95

9.91

99

9.44

合計

467

48.81

533

51.09

 如何であろう?
 がん以外にも、遺伝病、奇形、その他の病気も調べたが、浴びた放射線の量が原因と見られる病気は一つも見つかっていない

 また、陽江県の住民には、血液の染色体異常が多いことも分かっている。血を作る組織に、放射線が傷を与えていることははっきりしている。それでも、低いレベルの放射線を浴びている人たちの方が健康なのである。

 長崎で原爆を浴びた人と浴びなかった人の年間死亡率を調べた結果がある。
 それによると、50歳までは浴びた人と浴びなかった人に死亡率の差はない。ところが、60歳を超すと、被曝した人の方が死亡率が低い。つまり、放射線を浴びると長生きするということになる。

 「被曝した人たちは、人一倍健康に気を使ったからではないか」

 という反論が出た。そこで追跡調査をした。
 まず、被曝した人たちの被曝量で死亡数がどうなるかを調べた。そうすると、男性の場合、50〜100ラド=500_シーベルトから1シーベルト被曝した人たちは、被曝していない人たちより死亡数が10%少ないことが分かった。
 がん以外での死亡数を調べるとこの差はもっと広がり、35%も少ないことが分かった。
 しかし、50ラド=500_シーベルト以上の放射線を受けた人たちのがんによる死亡は、被曝していない人たちより高くなっている。これは放射線の害である。
 つまり、放射線には害と益の両方がある

 最後に、チェルノブイリのまとめである。
 事故直後に消火作業などをした134人が中程度から大量の放射線を浴びた。うち28人が放射線急性障害で亡くなったが、生き残った人たちに放射線による健康被害は出ていない。

 子供の白血病の発病率は、事故から8年の間に増えていない。

 子供の甲状腺腫瘍は激増した。高濃度汚染地域で平均の10〜90倍という報告もあり、患者総数652人のうち3人が死んだ。甲状腺に蓄積する放射性ヨウ素が出す放射線が原因であるといわれる。
 しかし、データを精密に分析すると、原発事故で甲状腺の検診を受ける人が急増したため、見かけ上甲状腺種の数が増えただけだと、著者は書いている。
 通常でも、死体を解剖して甲状腺を調べると、数個の腫瘍が見つかるのが普通である、とも書いている。

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 以上が、 「人は放射線になぜ弱いか 少しの放射線は心配無用」の概要である。

 無論、著者の説明、主張を信じる、信じないは読者の自由である。
 だが、信じるにしろ信じないにしろ、まずは知ることが必要である。知ろうともせずに、ただ怖い怖いと騒ぎ回る人は困ったものだと思う。

 一時は、放射線は怖い怖いとオオカミ少年報道を垂れ流してきたメディアも少しは反省したのだろうか。今日の朝日新聞別刷りのGLOBEでは、かなり冷静に放射線とそのリスクを解説している。私が3回に渡って紹介した「一定量以下の被曝なら心配医はいらない」という理論もきちんと紹介し、逆の見方をもあることにも触れている。そして、この議論の隔たりが研究の進展によって小さくなることを期待し、漠然と恐れるのではなく、正しく恐れることができるようにしたい、そのためにはまだ多くのハードルが残っている、と結んでいる。
 頷ける論である。

 さて、3回に渡った要約を読んでいただいた方々へ。
 これをきっかけに、ほかの本も読んでみてはいかがですか? 
 ただ、この本を読んだ経験からすると、これもかなりハードルが高いのではありますが……。

 放射線被曝には味噌がいいと講演会で語り、

 「中でもこの味噌が」

 と紹介したのが、自分の娘の会社が売っている味噌だった、という不思議な行動をとりながら、あちこちの週刊誌で駄文を公開している評論家さんもいらっしゃいます。
 くれぐれも、このような人たちの

 「怖い、怖い!」

 騒動に巻き込まれないようにしましょう。

 

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