●日誌一覧

シネマらかす

グルメらかす

音らかす

旅らかす

スキーらかす

事件らかす

 2011年7月24日 3点セット

 昨夕、長男が突然やってきた。なんでも、栃木方面(だったと思うが……)で会社仲間のゴルフコンペがあり、その帰りに寄ったのだという。
 1人である。いつもバンドエイドのようにくっついて離れない妻女がいない。

 「どうしたんだ?」

 「いや、今日は友だちと酒を飲むんだって」


 まあ、このあたりに伏線はあったというべきか。

 酒を飲み、飯を食い、酒を飲んだ。

 「原発って、もうダメだよね」

 「そうかな。俺は、原発はこれから安全になると思うが」

 「だって、何でも『想定外』にしてたら、誰も信用しないよ」

 「たしかに、『想定外』という言葉の使われ方には問題がある。正確に言えば、あえて想定に入れなかったことが今回起きたということではないかな」

 「原発に安全なんかないよ。自然エネルギーを使わなくっちゃ」

 「いや、今回の原発事故は、実は3つの要因で起きたと思う。まずは、揺れだ。これでパイプの継ぎ手が外れた。米国のメーカーの強い意向で、あえて最大震度を低めに抑えたという話もどこかに出ていた。地震国日本を甘く見たわけだ。次に津波の高さを想定していなかった。あのあたりは、過去にも大きな津波被害を受けている。その時の津波の高さを想定から外した。3つ目は緊急電源だ。原発の殺陣屋と同じ敷地で、しかも水を想定していない。この3つが重なった」

 「だから、安全じゃないでしょう」

 「いや、技術というものは失敗から学ぶものだ。今回の事故を詳細に分析してリスク要因を洗い出す。それをすべて想定内に入れた原発なら、ずっと安全になるはずだ」

 「そこまでしなく立って、自然エネルギーに切り替えたらいいじゃない」

 「コストの問題がある。それでなくても日本の電力は高い。自然エネルギーのほうがコストが低ければ、電力会社だって自然エネルギーへの異存を強めていただろう。だけど、原発に頼らざるを得なかった。それがいまのレベルではないだろうか。もちろん、この事故をきっかけに自然エネルギーの研究が進み、ずっと安いコストで発電できるようになるのが理想だが、一足飛びにそうはならないだろう」


 長男と酒を飲みながら離すのは久しぶりである。
 なのに、原発の話で盛り上がる?
 どっか規格から外れた親子ではある。

 その規格外れが床についたのは、今朝の1時過ぎだった。
 私は7時半には目覚めていた。
 長男は10時頃置きだし、朝食を済ませて帰っていった。

 それから1時間。

 「おい、あいつ、いっぱい忘れ物していったぞ」

 前夜、酒を飲みながら、私の古いギターを長男に譲ることで合意していた。忘れないようにと、わざわざ居間に出しっぱなしにしておいたのに、その場所にそのままある。

 「この本、読むか?」

 「えっ、もうこんな本でてるの。持っていくわ」


 といっていた「原発事故、放射能、ケンカ対談」(朝日新聞出版)も、居間のテーブルに置きっぱなしだ。

 「あいつ、大丈夫か? 頭腐り始めてないか?」

 といいながらダイニングテーブルに座った。テーブルの上でキラリと光るものがあった。

 「おい、あのバカ、指輪忘れていったよ」

 結婚指輪だった。おいおい、この指輪を忘れて帰宅したお前の運命に思いを巡らせたことはないのか?

 が、ただいま運転中の時間帯である。
 仕方なく、川崎の自宅で長男の帰宅を待つ嫁に電話をした。

 「というわけで、あいつ、3点セットの忘れ物をしていった。あいつはいま運転中だから君に電話をした。ついたらそういっておいて」

 「えーっ、指輪を忘れたんですか!? ひょっとしたら、潜在意識で忘れたいと思っていたんじゃないですか?」


 いや、そのようにいわれても、私は長男ではない。その製造責任者に過ぎない。それに、真相森林分析など学んだこともない。

 「その指輪、お父さんがしててくれますか?」

 そういわれても……。

 「だって、俺がこの指輪をしてたら、君が生む子供の父親は私になっちゃうじゃないか」

 ギターケースにギター、本、そして指輪を入れて発送した。明日には届くはずである。

 しかし、自宅に着いた長男はどのような歓迎のされ方をしたのか?
 いま現在、報告はない。

 

前の日誌                          next
無断               メール