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 2012年2月29日 雪

 目が覚めたら、窓の外はもう真っ白だった。
 今日はペットボトルの回収日である。起き抜けに、袋を3つ抱えてゴミ置き場まで運ぶ。足を運ぶたびに3cmほど降り積もったにサンダルの跡がつく。はだしの足が時折雪に触れ、背筋にまで冷気が走る。空を見上げると、ふわふわとした大きな雪の塊が次から次へと落ちてくる。

 桐生は久々の大雪であった。

 雪はなかなか降り止まず、朝食を終えて外を覗くと、ウッドできに積もった雪はもう5cm近い。
 そうか、最近の天気予報はよく当たるな。しかし、困ったぞ。今日は午前中に仕事がある。この雪では、マイカーで出かけるわけにはいくまい。
 桐生は、我が社ではスタッドレスタイヤ購入補助地域ではない。会社が補助してくれないから、スタッドレスタイヤなど持っていない。我が愛車は、従って、からきし雪に弱い。

 「まあ、今日はタクシーで動くか」

 酒を飲むときはタクシーで動き、あとで会社に請求する。酒を飲むのに使っていいタクシーを、酒を飲むのに使って悪いわけはあるまい。
 予定の時間は午前11時である。目的地までの所要時間は、大目に見ても20分。午前9時に家を出る必要はない。時間をつぶし、10時前に、いつも使うタクシー会社に電話をした。

 「1台回して欲しいんだけど」

 「あーっ、今朝は車がなくて。予約でいっぱいなんです」

 「そう、で、どれくらい待ったらきてくれる?」

 「うーん、1時間で行けるか、1時間半かかるか」


 それでは間に合わない。次々とクシー会社に電話した。

 「御免なさい。出払ってまして」

 「はい、承知しました。でも、雪で道が混んでるようなので、少なくとも30分は待ってください」

 あれあれ、全滅である。どこに頼んでも、予定時間までに目的地に着けそうにない。

 「ま、いいか。雪なんだし。予報では昼にはあがるといっていたから、午後からゆっくり出かけるか」

 私にとって、仕事とはその程度のものである。何しろ、朝から雪を降らせたのは天意である。天意は今日、お前は午前中は働いてはならぬ、と告げているのだ。甘えて、どこが悪い?

 と思いながらも、何となく腰が落ち着かない。早く雪が溶けて移動の自由を回復し、こなさねばならない仕事をこなさねば、という思いが脳裏から消えず、落ち着かぬ。
 私、せっかく天意をいただきながら、天意に身を委ねることができない。小物である。

 の割には、悠然と「1968」などを読み進んだりしていたのだが……。

 そうそう、「1968」、やっとベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)の章に進んだ。下巻の306ページからである。
 作家の小田実が看板になっていた緩やかな運動体だが、この本による、と当初小田実はさほど期待されておらず、いまの東京都知事、石原慎太郎を押す意見もあったのだそうだ。

 石原慎太郎がベ平連の代表? それだったら、俺、ベ平連に参加してたかな? 
 してなかったら、今の妻女殿と出会うこともなく、きっとまったく違った人生を送っていたはずである。歴史にifはない。それは重々承知しているが……。

 という読み方は、著者の意向とは違うかも知れないが、あの時代を生きた私はそういう思いを抱きながら読む本なのである。

 ああ、仕事は昼からで間に合った。午後1時過ぎにタクシーを呼んで出かけたが、主要道路の雪はほとんど消えていた。

 「これなら大丈夫そうだ」

 一仕事済ませて自宅に戻ったあと、私は愛車の屋根やフロントグラスに分厚く降り積もった雪を落とし、マイカーで次の仕事に向かったのであった。

 明日はずいぶん暖かくなるという。
 春。何かいいことが待っていてくれるかな?

 

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