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 2012年7月24日 血圧計

 2000年、国は高血圧の基準値を改訂した。
 それまでは、上が160、下が95以上を高血圧としていたが、それが140/90まで引き下げられた。おかげで、我が国の高血圧患者は、それまでの1800万人から、一挙に4300万人に増えた。
 おかげで、降圧剤をつくる製薬会社はウハウハである、とは、血圧関係の本を読めば、すぐさま理解できることである。

 今日は、これを前提として話を進める。

 今日、健康診断に行ってきた。今月中になんとしても行ってこい! と、会社からきついお達しが出たので、渋々歩を運んだ。

 私の場合、健康診断のたびに問題になるのが血圧である。健康診断を実施する医療機関で測ると、上はおおむね150以上、下も90台半ばという数値が毎回出る。2000年以降の基準でいえば、立派な高血圧症である
 

 「2000年までの基準えいえば、まだ正常範囲にあるぞ。たいしたことはない」

 と口では豪語しながらも、気にならないわけではない。気になるから、密かに血圧計を購入し、毎朝測定を続けた。もう半年以上になる。

 測定の原則は、朝起き抜けに測ることである。目をさます。まずトイレに行く。その足で血圧計まで歩き、穴の中に右手を突っ込んでスイッチを押す。1回だけの測定では不安だから、3回測る。その結果をグラフにする。
 それが、最近の私の生活パターンである。

 購入当初は、上が140以上、下が90台という日が続いた。やはり、やや高めか。血圧にいいというアミールを飲み、これも血圧にいいと聞くゴマ茶を飲んだ。加えて、血の流れをさらさらにするというEPAの服用も続けた。

 いつのころからだったか。上がおおむね120台、下が80台に落ち着いてきた。お金がかかるのでアミールとゴマ茶はやめ、EPAだけは飲み続けながら毎朝測っているが、日によっては上が110台、下が70台ということもある。前日深酒をすると、上が140を越えることもあるが、その日は備考欄に

 「前夜深酒」

 と書き込む。
 つまり、私の血圧は正常である。
 というデータの蓄積を元に、自信を持って今日の健康診断に望んだ。

 「次は血圧を測ってください」

 まるで三日月みたいに顎の尖った女性の指示で血圧計の穴に右手を差し込む。ほら、さっさとデータをはき出さんかい! お前さんからお墨付きをもらうために、今日は起きてから1本のタバコも吸ってないぜ。すべては数値のため。目先は節制したんだぜ!

 数字が出てきた。

 152/91

 なんやと!? そんな馬鹿な話があるか。
 もう一度測る。

 150/92

 お前、俺に喧嘩売ってンのか? もう一回や。

 149/91


 すべての測定が終わり、問診となった。私は椅子に座るなり、待ち受けていた医者に持参の書類を突きつけた。ここ数ヶ月分の、自宅で測った血圧である。

 「この病院の血圧計、狂ってませんか?」

 こちら、のっけから喧嘩腰である。

 「は、どういうことでしょう?」

 医者は怪訝な顔をした。

 「これは、毎朝自宅で測っている血圧のデータです。見てください。時折高いが、9割以上、正常値に収まっている。なのに、ここに来て測ると、どうしてこんなに高い数値が出るんですか。機械が故障しているとしか思えない」

 なにしろ、今朝自宅で測った血圧は、124/79なのである。

 「いや、血圧ってのはね、時々刻々変わるもので、今朝自宅で測った数値と、ここで測った数値が違うことは当然あり得ることです」

 ま、そういうわな。

 「確かに、運動すればそれなりに血圧は上がるでしょう。でもね、ここに来るのに走ったわけではない。車を運転してきたんです。そんなに上がるはずがない」

 データを背景にした追求は鋭い。

 「あのね、車を運転するのも運動なんです。それで血圧が上がっても不思議はない」

 打たれ強い医者である。

 「しかし、たかが運転程度でこの数値では、上がりすぎでしょう。もちろん、血圧は時々刻々変わるのでしょう。だとしたら、いつの時点で測った血圧で、高血圧だとか正常だとか判断するんですか? 普通は病院にある血圧計で測って数値が高いと、高血圧の疑いがあるというんじゃありませんか? 私はそういわれて、やむなく血圧計を購入して測定を続けた。自宅での測定では異常は見られなかった。ところが、ここに来て測ったら高い。私は高血圧なんですか? それとも正常なんですか?」

 問答の末、私は正常だということになった。
 が、本当に正常なのか? 面倒臭くなった医者が早く私を追い払いたくて正常にしてしまったのではないか? それに、自宅にある血圧計の方が狂っているという恐れだってあるのではないか?

 考えてみれば、病院にある血圧計が高めの数字を出すのは、経営的には理にかなっている。それで高血圧と診断し、定期的な診察を患者に強いれば病院の収入になる。降圧剤を処方すれば、薬局も製薬メーカーも喜ぶ。
 というのは疑いすぎか?

 何となく釈然としない健康診断であった。次から病院を変えるか?


 「快感回路」(河出書房新社、デイヴィッド・J・リンデン著)

 を読了。

 へーっと思ったところを抜き書きすると……。

 人間に、すでに見たような動的平衡に基づいた食欲コントロール回路が備わっている以上、体重を大幅に減らしてそれを維持するというのはきわめて困難なことなのだ。体重が落ちると脂肪が減り、レプチン・レベルが落ちる。すると生化学的な連鎖反応が起こり、代謝率を抑えて無意識の食欲を強める信号が発信される。失われる体重が大きければ大きいほど食欲は強くなり、エネルギーの消費は抑えられる。毎年莫大な売上げを上げているダイエット産業はそのことを知られまいとしているが、悲しいかな、これは避けがたい真実なのだ。

 つまり、ダイエットなんて無理ということか。

 (ネコがあなたのセックスを見ていたとして)ネコがおぞましいと感じることの一つは、人間が受胎しない時期に交尾をするという事実だ。また、一つの排卵周期のあいだに交尾の相手を一人に固定するというのも、ネコには理解しがたい。それに、このプライバシーはどうだ。セックスは公衆の面前で、群れのみんなが目にできるところで、そして必要ならば参加できるところで行うべきものではないか。そしてとどめは子育てだ。人間を観察しているメスネコは、なぜ役立たずのオスがしじゅうまとわりついて、手を貸したりエサを持ってきたりするのかといぶかしく思う。子どもについては、もうわけがわからない。五歳ににもなって自立できないなんて。

 確かに、動物の1種であるはずの人間の性行動は特殊である。
 が、特殊でないこともあると著者はいう。

 マスターベーションは、ウマ、サル、イルカ、イヌ、ヤギ、ゾウなど多くの哺乳類で頻繁に観察される。メスもオスもこの快楽に身を委ねている。(中略)しかしおそらく動物たちの中で最もマスターベーションに創意工夫を発揮しているのは、オスのバンドウイルカだろう。彼らはくねくねと動き回る生きたウナギをペニスにまとわりつかせる。

 動物の同性愛は想像できるありとあらゆる形で表れ、思いも寄らない形のものすらある。オス同士、メス同士のオーラルセックスはハイエナやボノボなど数多くの種で報告されており、ボノボではメス同士が生殖器をこすりあわせる。

 オスのヘラジカがメスのウマと交尾することはよく知られている。

 1995年6月のある日、博物館のオフィスにいたセース・ムイリカー博士は、オスのマガモが部屋の窓にぶつかるのを見た。カモは死んだ。様子を見に近寄った博士は、ほかのオスのマガモがやってきて、死んだカモの遺骸をレイプするのを目撃した。それは75分にわたって続いた。


 著者はジョンズ・ホプキンス大学医学部教授。神経科学者である。

 と説明して、サービスで、次の一節も抜き書きしよう。これはサービスである。

 生理学的に概説するなら、オーガズムというのは、男性でも女性でもきわめて単純な現象である。血圧と心拍が上昇し、不随意の筋収縮(直腸など)が起こり、強烈な快感が生じる。しばしば尿道壁の筋肉と、球海綿体筋という骨盤の二つの筋肉の収縮が伴い、女性ではときに腺液の噴出が生じる。直腸プローブを使って測定してみると、女性のオーガズムの平均時間は男性よりやや長く、約24秒持続する(男性は15秒)。ご承知のとおり、多くの女性は短時間の間をおいてオーガズムを経験できるが、男性ではそのようなことは稀だ。

 やや、サービス過剰であったか。
 「快感」をキーワードに脳の仕組みを解説するこの本は極めて面白い。お奨めする。税別1900円。

 ではまた。

 

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