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 2012年9月13日 再びの悪魔

 いま、悪魔が隣の部屋で寝ている。
 8月に啓樹とともにやってきて、我が肉体と財布をさんざんに酷使した悪魔・瑛汰である。わずか1ヶ月足らずで再臨した。

 今日、妻女殿に野暮用があって、妻女殿の専属運転手として東京まで往復した。その話を聞き込んだ次女が

 「だったら、一緒に桐生まで行こうかしら」

 といったのは、夏休み、瑛汰だけを桐生に寄越し、自分は親の顔を見に来なかったことからの発想であろう。次女に関しては、私と我が妻女殿には、遺憾ながら製造者責任がある。否も応もない。

 加えて、可愛さが際立ち始めた璃子も当然のことながらくっついてくる。「アンパンマン えいごもしゃべるよ おしゃべりいっぱいことばずかんDX」を嵩悟(しゅうご)から横取りする肉食系とはいえ、璃子は可愛い。我が妻女殿は、もうずいぶん長い間璃子の顔を見ていない。
 ま、歓迎ムードである。

 だが、そこには、当然のことながら、瑛汰がくっついてくる。

 午後3時過ぎ、東京の日比谷公園で落ち合った。

 「ボス、俺さ、跳び箱10段飛べたよ。幼稚園で飛べたのは俺だけさ」

 とにかく、運動神経のあるなしは別として、体を動かすのが大好きな子だ。

 「10段って、どれぐらい高いんだ?」

 「うーん。ママぐらいかな」


 自らの成果は、できるだけ大きく表現する。社会人に必須の生きる術を、早くも6歳で身につけている賢さが取り柄である。

 それだけなら、許そう。しかし、瑛汰はそれだけでとどまる男ではない。

 「あ、痛っ! こら、瑛汰、何で殴るんだ!!」

 突然、ボディーにパンチが飛んできた。

 「ヒッヒッヒ。この、この」

 2発目、3発目も続けざまに飛んできた。
 妻女殿の野暮用がなかなか終わらず、桐生への出発が遅れていた。そのことに苛立ったか?
 どこに行っても、すぐに闘いごっこを始める瑛汰である。時間をつぶすにはちょうどいい相手がいたとでも思ったか。
 たかが子どものパンチである。しかし、6歳ともなると、パンチにも鋭さが加わる。パンチを受ける用意をしていないときに飛んでくると、結構我が腹に食い込む。

 「この野郎!」

 取り押さえて肩に担ぎ上げる。そのままグルグル回って、

 「空気投げだ、参ったか!」

 と放り投げたいところだが、そうもいかぬ。静かに降ろすと、再び

 「この、この。やっつけるぞ! 璃子、手伝え!!」

 午後6時前に桐生の自宅に着き、一休みしてすぐそばのイタリア料理屋に出かけ、5人で夕食。終わって自宅に戻り、瑛汰、璃子と入浴。瑛汰も璃子も、やっと寝たところだ。

 我が家での瑛汰の寝場所は、私の隣である。布団で添い寝しながら、瑛汰がいった。

 「ボス、明日行きたいのは、本屋さんでしょ。瑛汰、買いたい本がいっぱいあるんだ。それから、トンボ捕り。あ、違った、トンボ捕りは明後日でいい。ゴーカートに乗りたいな」

 再び、私の肉体と財布に集中攻撃をかける計画を打ち明けた。やっぱり、悪魔である。

 しかし、悪魔の寝顔とは、こんなに可愛いものか。悪魔に思うがままに収奪されながら、悪魔の顔を見ると目尻を下げる。

 私は、疑うことを知らぬ折り紙付きの善人なのか。それとも、単なるマゾなのか。

 明日は朝から、瑛汰を車に乗せて書店に向かうに違いない私である。

 

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