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 2012年10月15日 予定通り

 12日、瑛汰の運動会の応援に駆けつけ、瑛汰の応援に血道を上げた両親にほったらかされた璃子の相手をしつつ、肝心なところでは、

 「璃子、お兄ちゃんが走るぞ、瑛汰が走るぞ」

 と璃子に言い聞かせて瑛汰に応援に回る。時には

 「お父さん、瑛汰はこの辺で組み体操のピラミッドやるから、こっちから写真を撮って」

 という次女の言いつけに従いつつ、とにかく無事に応援を終えた。

 瑛汰は、徒競走に出たのを皮切りに、くす玉割り、大玉転がし、組み体操、リレーなど、ほとんど出ずっぱりの活躍。
 そうそう、跳び箱にも出場した。飛べない子が一人ずつ脱落する中、最後まで残って見事に10段を飛び、メダルを授与された。
 1か月ほど前までは

 「ボス、10段飛べるのはね、瑛汰だけなんだよ」

 と自慢していたが、練習の成果であろう、瑛汰を交えて11人が10段を飛び、メダリストになった。

 「さあ、何人いるかな? はい、こちらから英語で番号!」

 と園長と覚しきおばさんが号令をかけた。えっ、瑛汰は反対の端だぞ、11番目に並んでるぞ、11って、英語でいえるのか?

 心配のしすぎであった。瑛汰は見事に

 「イレブン!」

 と大声を上げた。瞬間、運動場に感嘆の声が上がった。

 「すごーい、あの子、何でイレブンなんて知ってるの?!」

 子供とは、教え込めば対外のことは記憶する生きものである。

 それなのに、帰宅するとすぐに学習塾の公文に行って勉強してくる1日で、疲れ果てたらしい。夜、本を20ページほど読んでやり、

 「次も読んで」

 というのを

 「ダメ。疲れてるんだから早く寝ろ」

 と強引に寝かしつけると、3分もしない間に寝付いた。

 この日、予定通り、瑛汰の活躍を祝しながら4日ぶりのビールを味わったのはいうまでもない。璃子が酌をしてくれた。

 13日は、全員で新宿・伊勢丹へ。来春から小学生になる瑛汰のランドセルを買うのが目的だったが、両親の好みと瑛汰の好みが合わず、お預け。開催中の冬物バーゲンで、私はダウンジャケットを買う。英国製、1万5000円強。この冬まで着ていたのがユニクロの6000円。それに比べれば、来る冬からは高級品で寒さをしのぐことになる。

 瑛汰にねだられ、新宿・三省堂で本を3冊。同じフロアに段ボール製の「ハウス」があったので、璃子のおもちゃに購入。1800円也。
 横浜に帰宅後、直ちに組み立てた。璃子だけでなく、瑛汰も大喜びであった。

 夜、長男夫妻来る。これも計画通り、ビールを痛飲。

 14日、朝から川崎。ラゾーナ。これも瑛汰のリクエストで

 「ボス、昨日買った本、全部読んじゃった。新しいの買って」

 のリクエストに押されたものだ。
 確かに、前日、瑛汰は買った3冊の本を貪り読んでいた。本好きは血のつながりか。
 しかし、私が読書家になったのは大学に入ってからだったが……。

 昼食後、瑛汰、璃子と

 「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

 を鑑賞。見終えて桐生に戻る。いささか疲れを覚え、

 「今日はビールいらないの?」

 の妻殿の声に

 「こんな日は、飲む」

 と応え、晩酌。早めに寝ようと思ったが、読み始めた

 「女信長」(佐藤賢一著、新潮文庫)

 がとてつもなく面白く、引き込まれる。

 信長は実は女であった。初めて見破ったのは斎藤道三で、その道三によって信長、実名「お長」は女になる。以降、女であることを使って織田家の分裂をまとめ(柴田勝家と男女の仲となる)、浅井長政と恋仲になってお互いの体を貪りあい、

 「ほかの女と娶(めあわ)せるよりは」

 と妹のお市を輿入れさせる。
 その上で……。

 ま、そのあとはまだ読んでないので何とも表現しかねるが、実に面白い。
 ま、それは無理筋でしょう、といいたくなるところもないではないが、著者の最大の狙いは、信長を女にすることで、革命家であった信長の実績を浮かび上がらせることにあるようだ。

 つい数十年前、革命家を気取った共産党員、全共闘の学生の中ですら、男達は、外に出て闘うのは男、女は中にいて男の欲望を満たしたうえで、内を守るもの、という暮らしを続けたといわれる。男は本来、保守的なものなのだ。ずっと男社会が続いたため、男は失うものを沢山持った。守らねばならないのである。

 そんな男に、世の中の価値観をひっくり返すことなどできるはずがない。そもそも武士の社会とは、領地を守る必要から生まれた。それまでの武士階級は領地にいるのがあたり前で、いざ戦、というときも招集するのに何日もかかった。加えて、戦ができるのは農閑期だけ。生きるため、食料を売るために農繁期は田んぼや畑に縛り付けられた。そうして得られた暮らしに君臨したのが男である。その制度に疑いを持つはずがない。

 そんな時代に生きた信長がいつでも闘える常備軍を創った。常備軍を創るには、武士を土地から引きはがさねばならない。土地から引き離し、城下町に住まわせて農業で暮らしを立てさせるのではなく、金銭で暮らせるようにする。信長は、それを日本で初めて実現した。

 あるいは、鉄砲に人一倍注目したのが信長である。槍を長くしたのも信長である。
 それまでの武士は、戦で手柄を立てることが求められた。名乗り合い、死力を尽くして一騎打ちをする。そうしなければ、手柄が個人のものにならないからだ。だから、目立ちやすいように、どんな場所でも取り回せる短い槍を使い、接近しなければ相手を倒せない刀を使った。
 鉄砲はずっと離れたところから相手を倒せる。長い槍は、その槍を持った兵を横一線に並べれば、短い槍を持った相手を寄せ付けない。誰がどのような手柄を立てたのかは見分けにくい。
 信長は個人記録より、for the teamを重視した。要は味方が勝つことだ。誰が手柄を立てたなんぞ、どうでもいい。
 これも革命的な発想の転換である。

 著者は、信長が様々な革命ができたのは、信長が女でなかったからである、というのだ。そんな根本から考え方を変えるようなこと、男にできるはずがないではないか、というのである。

 面白い。男の私から見ても、かなり当たっているから、なおのこと、面白い。

 すでに桶狭間は終わった。話はこれから、朝倉攻めである。そのあとは、恋仲だった浅井長政の親子の髑髏(しゃれこうべ)で酒を飲み、長篠の戦いで武田軍を打ち破り、やがて本能寺へと話は進む。著者は、その一つ一つにどのような仕掛けをして、信長が女であったことを生かすのであろうか。先を読むのが楽しみだ。

 誠に面白い思考実験である。

 

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