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 2013年1月11日 職業倫理

 私は馬鹿が嫌いである。中でも、自分の馬鹿さ加減を自覚しない馬鹿には怒りすら覚える。

 整形外科に行ってきた。腰の薬は2週間分しか出してくれないから、2週間に1度は通う勘定だ。
 行けば、まずリハビリである。リハビリといっても、上がらない肩を無理に上げたり、痛む腰を無理に折り曲げたりする難行苦行ではない。電気治療である。私は、右肩、それに腰に電気治療を施される。

 電気治療では、皮膚に電極を貼り付ける。そこに電気を流し、筋肉をビリビリさせる。どういう働きで治療に役立つのか、いまいち分からないが、治療が終わった後は患部が痺れ、痛みも何も感じない。ということは、

 痛みを感じないから筋肉が緩む筋肉が緩むから血液が流れる患部の修復が進む

 ということか。
 いや、これは素人の私が勝手に考える治療効果である。本当かどうかは分からない。

 分からないが、本日もリハビリに臨んだ。

 「はい、安堂さん、今日は肩から始めましょうね」

 今日は、といわれなくても、毎回リハビリは肩から始まる。腰から始まったことはない。相変わらず無駄なことをくっちゃべる看護師ではある。
 と思いながら、セーターを脱ぎ、シャツを取り去って下着一枚になる。

 「これで大丈夫かな?」

 「はい、いいですよ」

 ここは通常の会話である。私に分からないのは、次の一言だ。

 「えーっと、安堂さん、肩は両方でしたっけ? 右だった?」

 あのさ、私の記憶によると、肩の治療を始めたのは昨年の春なのだよ。計算すれば、もう10か月前後、あなたと顔を合わせてリハビリを受けているのだよ。ということは、すでにして20回前後は肩のリハビリを受けたわけだ。それに、前回も、前々回も、いや、その前の一連のリハビリも、確か同じ一言で始まったのだよ。
 あのね、痛むのは、当初から右肩なんだ。時によって左肩になったり、両肩になったりしたことはないんだ。徹底して右肩なんだ。
 それを、まだ記憶してない? 馬鹿じゃない?

 まあ、沢山の患者を診なければならない立場である。一人一人について記憶することは困難かもしれぬ。ましてや、私は電気治療を受ける間、ずっと読書をする。目立たない患者である。
 故に、私に関する記憶がなかなか固まらなくても無理はないのかもしれない。
 だけど、カルテ、ってものがあるだろ? あんたらプロを自認するのなら、自認しなくてもそれで給料をもらっているのなら、事前にカルテを見るのは当たり前のことではないか?

 こういう人を、私は馬鹿と呼ぶ。

 右肩のリハビリは、右肩の周りに6個の電極を吸着番で取り付けることで始まる。
 6個を取り付け終えた彼女はいった。

 「はい、これで大丈夫ですか?」

 これも毎回のご下問である。耳にタコができたからだろうか、思わず、口が動いた。

 「あのね、大丈夫か、って聞かれても、私はリハビリ治療に関しては素人なんです。大丈夫かどうかなんて判断できるわけがない。痛むところはお知らせしているはずです。それを知った上で、『大丈夫なところ』に電極を貼り付けるのがあなたのお仕事ではありませんか?」

 私は、こうして多くの敵を作っていく性格に生まれついたらしい。自覚せねば。


 リハビリが終われば診察だ。

 「どうですか」

 医者の一言目は、いつもこれである。

 「まあ、あまり変わりはありませんが、実は数日前からまた腰が痛くて」

 「どうしました?」


 「あの−。年末にTarzanという雑誌で肩痛と腰痛の特集をやりまして、で、買っちゃったんですよ。年が明けて、肩痛対策の運動をしていたら、何となく肩が軽くなったような気がして、それで腰痛にも踏み込んじゃったんですよね。そしたら、痛くなって」

 「あーあ、Tarzanね。で、どんな運動なんです?」

 「ま、腰を伸ばしたり、ひねったり、軽い運動ですけど」

 「ありゃ、ひねっちゃった。あのね、Tarzanが書いてるのは、普通の腰痛のことなんで、それをそのままやっちゃってはいけませんねえ。安堂さんの場合、ひねるのは御法度です。やっていいのは腹筋運動。今日から腹筋運動をやってください」


 ということは、今回の腰痛の原因は腰をひねったことか。なるほど。
 それにしても、腹筋運動がいい? それ、あなたから聞いたのは初めてだけど……。

 明日から、多分、腹筋運動に勤しむ私である。
 ふむ、1か月もすれば腰痛も緩和し、おまけに、スリムな腰回りの私がいるのかもしれない。

 ご期待あれ! 

 

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