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 2013年2月16日 権力という暴力

 今朝の朝刊各紙は、大阪・大東市の小学5年生の男の子が14日、電車に飛び込んだと報じた。自殺である。この子は、自分の通う小学校が統廃合でなくなることに心を痛めていた。

 「どうか一つのちいさな命とひきかえに、とうはいごうを中止してください」

 この子が残した遺書にそうあった。私は衝撃を受けた。
 
 だが、メディアも、体罰が原因で高校生が真だといきりたった大阪市長も、この自殺には冷たい。
 我が家には朝日、毎日、読売、日経、それに桐生タイムスの夕刊が来るが、続報を書いた新聞はない。これが級友の虐めや、教師の体罰が原因だったら、必ず続報があるはずである。
 学校の統廃合が原因だと、なぜ続報も、大阪市長の記者会見も開かれないのか? 大阪府知事は、大阪市長の腰巾着を務める男ではないか(小学校は市教委の担当で、大阪府に責任がないことは知りつつも、ついつい、こんな風に書きたくなる)。

 大阪市では先日、高校バスケット部のキャプテンが自殺した。指導した顧問の体罰が原因だとメディアは派手に取り上げ、大阪市長は入試を中止した。
 その是非は、いまは問わぬ。だが、たかが体罰で自殺したらしい高校生があれほど大騒ぎになったのに、今回の小学生は何故騒がれないのか?

 今回は明瞭な遺書があった。小学生が自ら命を絶とうと思い立った原因は、小学校の統廃合である。

 バスケットボール部の顧問が平手打ちをし、高校生が自殺した。平手打ちと自殺の関係は決して明瞭ではない。だが、顧問は懲戒免職となった。
 それに比べれば、今回の小学生の自殺は、原因と結果が遥かに明瞭である。原因は彼の通っていた学校がなくなることだ。それを決めたのは市教委であり、それをやむなくした市当局である。誰が責めを負うべきかは極めて明瞭ではないか。バスケットボール部顧問の懲解雇が是認されるのなら、少なくとも教育長と市長は責任を取って職を辞するべきである。

 メディアはなぜ、こんなにはっきりした因果関係があるのに、責任者を追求しないのか?

 部員に体罰を加えた顧問。しかし、一人の個人にできることには限りがある。相手が一人であれば50回の平手打ちをすることもできよう。しかし、2人になると100回、10人になれば500回である。相手の赤くなる前に、自分の手が腫れ上がって、平手打ちなど、やりたくても、やらねばならないと思っても、できなくなる。
 その程度に過ぎないのに、メディアも大衆も、こうした暴力には敏感である。

 だが権力は、暴力を振るっても、自分の手も足も、ちっとも痛まない。会議を繰り返し、それをメモに起こし、書類にまとめる。それだけである。
 だから、大衆は権力の暴力には鈍感になる。
 だが、その被害者の数は、ことによれば膨大に上る。太平洋戦争での死者数は、兵士230万人、一般市民80万人といわれる。一人で殺し尽くせる数ではない。
 
 学校の統廃合を、太平洋戦争と比べる愚は自覚している。ただ、権力犯罪の恐ろしさは、個人犯罪の比ではないといいたいだけだ。

 「一人殺せば殺人犯だが、100万人殺せば英雄だ」

 と表現してみせたのはチャップリンだ。

 大阪・大東市の小学生、権力犯罪の犠牲者ではないのか? なぜメディアは、その権力犯罪を暴こうとしないのか? いまやメディアは、権力の片棒を担ぐ存在に成り下がったのか?


 もちろん私は、例え小学生とはいえ、一つだけの原因で自ら命を絶つとは思わない。学校の統廃合以外にも、この子を追いつめた要因があったはずだ。親の教育も問われなければならない。
 だが、遺書に見る限り、引き金を引いたのは、学校の統廃合である。

 また、学校の統廃合もやむを得ざることではある。ここ桐生市でも、多くの小学校、中学校が統廃合で廃校になった。統廃合などせずに済めばいいのだが、人口が減り、児童数が減り、財政もままならないとなれば、やむにやまざる統廃合もある。

 では、どうすればよかったのか?

 残念ながら、今すぐの答えは持ち合わせていない。だが、だからこそ、この事件を深くえぐって欲しい。

 この子は、何故これほどまでに学校がなくなることに心を痛めていたのか?
 心を痛めるこの子に、誰も気付いてあげられなかったのか?
 統廃合は、誰が見ても合理的なやりかたで進められたのか?
 新しい学校への通学手段は?
 この子はどんな子だったのか?
 親は、この子をどのように育ててきたのか?
 周りの子供たちは、この子をどう見ていたのか?
 周りの子供たちは、自分の学校がなくなることをどう思っているのか?
 統廃合を避ける手段はなかったのか?

 知らねば正解に行き着かない問いはたくさんある。

 
 学校の統廃合は、人口減に悩む地方都市ではどこでもあることだ。この自殺事件を一過性で終わらせたら、この子に続く子供が出てこないとも限らない。
 関係者は、もっと神経を張り詰めていただきたい。

 

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