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 2013年11月15日 前途遼遠

 実は、ネットワーク・オーディオなるものに取り組み始めている。
 音楽をすべてハードディスクに収め、その0、1信号をネットワーク・プレーヤーなるものでアナログ信号にし、アンプで増幅してスピーカーを鳴らす。いってみれば、iPodに入れた音楽を、自宅のオーデイオで再生するのと同じ仕組みである。

 「バカじゃないの。iPodってそこそこの音しかしないぜ。それをクリスキットで増幅したって仕方がなかろう」

 うん、あなたはオーディオの世界を理解されたいる方である。元が悪ければ、絶対にいい音は出てこない。
 私だって、最初はそう思った。

 「いや、iPodの音は、信号が圧縮されているので、そこそこの音しかでないのは仕方がないのだ」

 これもオーディオに造詣の深い方でなければいえない正論である。
 
 ということを理解し、だからネット・オーディオには無関心を決め込んでいた私が、何故にネット・オーディオなどに興味を持ったのか。

 この「らかす」を通じて知り合った東京のSさんのせいである。

 CDから無劣化でハードディスクに信号を入れます。これを再生すると、CDよりいい音が出て来るのです」

 そんなバカな!

 彼に聞いた瞬間、私はそう思った。
 だとしたら、ハードディスクって、美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに写すといった富士フイルムの上を行くではないか。
 物理学を多少理解していれば、オーディオの頂点とは、ディスクに入っている音楽信号を忠実にそのまま再生するところにある、ぐらいのことは分かるはずではないか。元のディスクに収録された音よりより良い音は、絶対に出てこないのが、オーディオの常識である。

 「ところが、ですね」

 とSさんは、無謀にも私の説得を試み始めた。酒の席での話である。

 「おっしゃることはその通りです」

 だったら、そんなもの、勧めなければいい。

 「でも、CDの再生には大きな問題があった。読み取りエラーです。ピックアップはディスクに記録された0、1信号を読み取っていくわけですが、性格に読み取れないことが多々ある。その時、CDプレーヤーは、前後の信号から『こうであったに違いない』信号を創り出して埋めます。それを補正回路というのですが、これが何回も繰り返されるため、我々は違った音を聞くことになります」

 まーた、また。
 だって、ハードディスクにCDの音を入れる過程だって、同じ事が起きるでしょうが。CDをハードディスクに読み取らせるには、パソコンを使うでしょう。CDプレーヤーが正確に信号を読み取れないのなら、パソコンのCDドライブだって、やっぱり正確には読み取ってないよね。基本的におかしいジャン。

 「いや、パソコンでは、1ビットでも信号が違えばソフトは動きません。だから、ディスクの信号を読み取るとき、何度も読み合わせ、確認するのです。何度も確認して、ディスクと同じ0、1信号を内蔵ハードディスクに書き込むから、ソフトはちゃんと動くのです」

 いわれてみればその通りだ。

 「つまり、ハードディスクはCDの信号を正確にコピーしたものになります。これをネットワーク・プレーヤーで再生すると、補正回路の必要がなくなるから、ディスクに入っていた通りの音が再生されます」

 その瞬間、私は導入を決意した。つまり、説得されてしまった。

 Sさんの紹介で、プレーヤーは3万円の中古品を手に入れた。音楽を保存するハードディスクはBUFFALO製で、2Tバイト、約2万円。パソコンから離れた場所で音楽を再生するため、無線LANを使う必要がり、やはりBUFFALOの無線端末が5000円。
 CD以上の音を聞くための投資と思えば、たいしたことはない。


 というわけで、必要な3種の神器(テープコピーの3種の神器とは別。念のため)は10日ほど前に揃った。

 これを使わねばならぬ。最初にトライしたのは、先週の土日である。
 まず、ハードディスクを無線LANにつなぎ、パソコンから最初の設定をせねばならない。同梱されていた説明書に沿って手順を重ねた。が、途中でどうしても行き詰まってしまう。パソコン経由でCDのデータを送り込む先のフォルダが、どうやっても出来ない。
 こういう時は、最初に戻るに限る。

 と考えて、ネットでマニュアルを探し、このハードディスクの初期化を試みた。マニュアルには60秒程度と書いてあったが、5分たっても初期化が終わらず、ハードディスクは相変わらず高速回転を続けている。

 「なんだ、これ?」

 と訝り、一度電源を落として再び初期化を試みるも、相変わらず初期化は終わらない。

 「これ、壊れてる

 としか思えない。
 週が開けるのを待って11日、BUFFALOに電話で問い合わせた。
 電話での指示通り作業を進めても、やっぱり初期化が出来ない。

 「初期不良だと思います。交換しましょう」

 ということになり、昨日、交換品が届いた。

 週末を待って作業しようと思い定めていたが、しかし、現物が目の前にあり、ネット・オーディオ実現が指呼の間にあると思うと、どうしてもそわそわしてしまうのが私である。朝は我慢した。しかし、昼が近づくにつれてそわそわが募った。挙げ句、土曜日を待つ気力をなくした。そして、仕事を放棄した。職住一緒は、それが出来る。いいことか、悪いことか、は別の問題である。
 11時を過ぎるころ、私は荷物を解いた。

 不良品の代わりに正常品が届いたのである。今回こそはうまく行く。
 私はそう思った。
 私でなくても、そう思うはずである。

 ところが、そうは問屋が卸さなかった。
 再び、同じ症状が出た。

 「なんだけど、どうして?」

 再びBUFFALOに問い合わせたのはいうまでもない。
 1時間近く待たされて、最初につながった。話しているうちに間違ったボタンに触れ、電話が終了した。再び問い合わせ電話をかけた。再び1時間ほど待たされた。
 しばらく電話で話し、向こうの指示通り作業をしたあと、

 「調べて、夕刻電話をする」

 電話の向こうの専門家はそういった。
 約束通り、午後6時を20分ほど過ぎて電話が来た。今回は女性であった。そしてやりとりすること20分余り。

 「おたくは、通常のルーターに、我が社の無線LANルーターがぶら下がり、いわばルーターが2重になっています。2重ルーターになると、通信が混乱するという報告があります。どうも、おたくもそのようです」

 なるほど。それは分かった。
 我が家のルーターが2重になっているのは、仕事で使うパソコンは、何でも「機密」を守るため、無線LANにつなぐことを禁じられている。
 しかし、私用に使っているiMacは、iPadと情報を共有するために、無線LANにつながざるを得ない。そのような理由で我が家には無線LANが導入されているのである。
 それがいけない?

 「だったら、 うちみたいな環境では、ネット・オーディオはやれないってこと?」

 何じゃ、そりゃ?!

 「いえ、それは申し訳ないので、もう少し調べさせてください。何とか打開策がないか調べて、明日お返事します」

 と、再びネット・オーディオ実現は延期された。明日、彼女、ないしは彼女よりネットワークに詳しい社員が電話をくれることになった。

 機械がうまく動かないのはいらだたしいが、しかし、ユーザー目線でトラブルに対処しよう露するBUFFALOの対応には得心がいく。
 人間関係の要諦は、問題を起こさないことではない。起きたときに、どう対処するかである。

 BUFFALOは名古屋の会社である。
 かつては、真空管式のアンプ、超重量級の意図ドライブターンテーブルを製造、販売するオーディー機器メーカーだった。当時、社長の牧さんは、大須の小さな店で、店番をしていた。

 私がその店で牧さんに会って30年以上の月日がたつ。
 オーディオからパソコン周辺機器に仕事をシフトされたころ、電話をした記憶がある。

 「最近は、こんなものを作ってまして」

 という話の「こんなもの」が全く理解で飽きず、トンチンカンな会話をしてしまった私であった。

 牧さんは、いい会社に育てられた。
 トラブルに遭いながら、何となく嬉しくなった。

 願わくば、明日、解決策が授かりますように。


 冷えて痛めた腰が、何とか正常に近いところまで戻ってきた。
 夕刻、マッサージ師に言われた。

 「冷えるのが一番いけないんですよねえ」

 そうか、スキー用の下半身アンダーウエアを買いにいかねばならないのか。

 股引は死ぬまではかない! と決心している私は、風呂に浸かって腰を温めながら、そんな物思いにふけったのである。

 

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