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 2015年2月23日 自作派

 旧知のI君からメールをもらった。

 「上記DACとコンピュータ部分の構成でよろしけば、なんと! ご予算2万円+α程度です」

 驚くべきメールであった。
 いや、これだけでは何のことか分からんわなあ、と自分でつぶやいて、これから解説に移る。

 もう1ヶ月ほど前だろうか。こんな時間(現在午後8時27分)に突然電話をもらった。デジキャスで一緒だったらキヤノングループからである。

 「いまみんなので呑んでてさ。で、呑むと、安堂さんどうしてるかねえ、って話になるのよ」

 と、まず電話口でがなり立てたのは、かのH氏である。そう、麻布高校出身の彼だ。かなり飲み過ぎているようで(まだ飲み過ぎる時間ではない、とも思ったが)、しゃべりがかなり怪しい。口も舌もアルコールで部分麻痺して言葉がよく聞き取れない。

 で、それに代わって電話口にでたのがI君であった。パソコンに蓄えた音源を再生するためのDAC(Digital Analog Converter)を作ってくれた彼である。そのDACはいまも、我が事務室で毎日働いておる。妙なる音楽を聴きながら仕事ができるのは、これすべて彼のおかげなのだ。

 「安堂さん、DACどうです?」

 「おお、ほんとに助かってるよ。いまも、ほら、音楽が聞こえるだろ? 君のおかげだ。でね、ちょうどよかった。ひとつ頼みがあるんだけど」

 「何です?」

 「パイオニアが新しいネットワークプレーヤーを出したじゃない。あれ、時間があったらどこかで試聴してくてくれない? 何しろ、桐生では試聴できるところがなくてね。ネットでの評判は上々なんだけど、聴いてみなきゃホントのことは分からないし、君が聴いて『いい』といったら、俺も信用できるし。それから購入を考えようと思うんだ」

 「ああ、それもいいですけど、俺、いまネットワークプレーヤーを作ってるんですよ。それ、どうですか?」

 「えっ、そんなもの、自作できるんか? いいなあ、できたら、俺にもひとつ作ってよ」


 あれから1ヶ月。どうやら出来上がったらしい。それが冒頭のメールなのである。
 写真も添付されていた。見ると、CDケースより小さい基盤1枚に、それより小さいブラックボックスが接続されている。

 「黒いのがネットワークオーディオプレーヤのコンピュータ部分になります。再生ソフトも内蔵しております」

 えっ、ネットワークプレーヤーって、たったこれだけの部品でできちゃうの? これなら、両方合わせても、多分数百gしかないではないか。
 しかも、見た目、回路は極めて単純である。これも気に入った。ネットワークプレーヤーとは、NASから受け取ったデジタルデータを、アナログ信号に変えてくれればいい。その変換の正確性はDACチップによる。あとはプレーヤーとしての動作を取り仕切るコンピュータがあればいいわけだ。

 Simple is best.  
 
 これはクリスキット精神である。
 であれば、市販のネットワークプレーヤーって、どうしてあんなに重いんだ? 評論家どもは、

 「電源部分にコストをかけ、アナログ回路も練り上げられて」

 などと分かったような分かってないようなことを書き連ねて原稿料をせしめているが、考えてみればネットワークプレーヤーとは、それだけの働きをすればすむものである。アナログに戻った信号に、いろいろなお化粧はしてほしくない。

 私は直ちに返信を送った。

 「この提案を拒否する勇気を、私は持ち合わせていません。よろしく御願いします」

 本日夕刻、桐生市のO氏に、この話を伝えた。O氏は本日、仕事で東京に出向かれた。出向く際に、妻女殿に嘘をつかれたらしい。

 「多分、4、5時間かかるから、帰りは遅くなる」

 仕事は、当初から1時間もあれば終わると見込んでいた。では、彼は何故に時間を作ったのか?
 普通、手の込んだ工作で生み出す時間は、女に使うと決まっている。でなければ、妻女殿に嘘をついてまで、自由な時間を作る理由がないではないか。
 そうえいば、O氏は東京の大学を出た。その後も、様々な理由でしばしば東京を訪れる。おお、なかなか隅に置けないではないか!

 「で、時間を作って秋葉原に行ってきたの」

 えっ、女房に嘘をついて秋葉原……?

 「スピーカーを試聴してきてさ。やっぱり、高いといい音がするよね。でも、俺の小さな部屋には大きなスピーカーは入らないし、高いスピーカーは買えないし、あんたが言ってた自作スピーカーはどうだと思って専門店に聴いたら、『密閉箱用のスピーカーユニットはもうなくなりました』っていわれて」

 何のことはない。女房に嘘をついて作った自由時間を、彼はオーディオ趣味に費やしていたのである。
 そういえば、ネットワークオーディオを彼に教え、この世界に引きずり込んだのは私だ。その趣味が高じるのはいいことだが、しかし、それは女房に嘘をついて作った時間で追究するものか?
 女房に嘘をつく正当な理由は、愛しい女のベッドに飛びこむことしかない、という程度の美学もあなたにはないのか?

 と訝りつつ、ついでにI君の申し出をご披露した。

 「いいね、それ、いいね。俺もほしい! 頼んでくれる?」

 I君、どうでしょう? 他にも欲しがる人が出そうだし、あといくつか作ってくれますか?
 いっそ、クリスキットに学んで、キットにして売り出してみる?

 完成品が届くのが楽しみである。


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