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 2015年3月2日 確定申告

 に行ってきた。
 収税事務所に到着したのは、午前9時ちょうど。それでも私の前に列ができていたから、桐生の人たちは早起きである。

 受付の前に並んでいて、あと2、3人で私の番というとき、受付の男が大きな声を出した。

 「だめです、そこは。後ろの黄色い線のところで待っていてください」

 立って並びながら文庫本を読んでいた(まるで二宮金次郎? といっても、知る人は少ないか)私は、声に促されるように様子を見た。叱られていたのは、80歳前後と見える男性であった。受付中の男性のすぐ後ろで自分の番を待っている。それが、近すぎるというのである。

 ムッ、とした。

 ムッとした私は、そのはけ口を探し求める質である。

 「おい、誰にも迷惑かけてないぜ。そもそも、黄色い線の手前で待てって、どっかに書いてるか?」

 あえて、受付の男に聞こえるように言った。
 このような場合、次にムッとするのは受付の男である。だから私は、そこから反撃があると構えていた。
 ところが。

 「あの人だって、ああいう風にいわなきゃ、上から叱られるんだから」

 受付の男はピクリとも反応を見せず(ひょっとして、耳が遠い?)、声は、列の後ろから聞こえてきた。振り返ると、菜っ葉服を着た男性である。視線を向けると、何故か目をそらす。だったら、声を出さなきゃいいのに、このゴマすり。

 「怒鳴られるんなら、怒鳴られればいいんだよ。なんでこいつのことを心配しなきゃならん? そもそもこっちは、来たくてここに来ている訳じゃない。なのに、どうして並び方にまで役人に文句を言われなきゃならないんだ?」

 そういうと、彼は黙ってしまった。
 ったく、役人にこき使われて、役人の味方をするって、あんた何者? 自分の勤め先でも、そうやってひたすら長いものに巻かれているのか?

 最近の確定申告は、ひたすらコンピューターに数値を打ち込む作業である。
 であれば、自宅のパソコンから作業をすればいいようなものだが、税とは複雑なもので、

 「ん? これはどこにどの数字を入れればいいんだ?」

 と思案に暮れることが数多くある。何しろ、1年に1回だけの作業だ。その時記憶しても、1年後には忘却のかなたなのである。だから、面倒だが税務署まで足を運び、彼らのアシストを受けながら数値を入れる。

 「えーと、収入は給料と、この年金と、あの年金と……。あら、たったこれだけしかないの?」

 「控除は、医療費と、保険と。うん、これで全部だな」

 と数値をいれ終わり、

 「はい、終わったんで結果を出して」

 と頼むと、紙が出てきた。

 「安堂さん、ここにあるように、還付額は2400円です」

 えっ、たった2400円? それ、桁が間違ってない? 確か、前の年より収入は減っているはずだし、医療費は40万円を越しているし。申し訳ないけど、数字を確認してくれる?

 税務署の職員が数字を一つ一つ付き合わせてくれた。

 「間違いありませんね」

 とほほ。2400円しか戻ってこないってか。飲み代にもならないや。

 「ところで」

 と、その税務署の担当者が言い出した。

 「確か、去年も担当させていただいたような……」

 そういえば、何となく顔に見覚えがある。にしても、期間中、少なくとも数百人にあるお役人が、私を記憶しているとは……。俺、そんなに忘れがたいキャラか?

 「いやあ、先ほどからお話を聞きながら、できれば場所を変えてお話を伺えれば、と思っていたんですが」

 はて、この人、私の何に感じ入ったのか? 先ほどからの話といえば。

 役人には4つのタイプがある。

 感心するほど働く人。
 よく働くが、働く狙いがトンチンカンで、結果としてはた迷惑な人。
 仕事をしないことが出世への早道だと思っている人。
 何となくそこにいるだけの人。

 
 うん、確かそんな話をした。だけど、それは民間企業でも同じ事だ、と付け加えたな。

 それから、こんなこともいった。

 何かというと、役人は税金で飯を食っているから云々、という人がいる。それは間違いである。民間人であれ役人であれ、働いて報酬をもらうのは当たり前である。報酬の原資が企業の利益であるか、税金であるかは何の意味もない。それぞれに違った使命を負っているというだけのことである。

 そうそう、嫌みも言った。

 あなた方は国民が税金を払うことを当然だと思っているが、世界には税金のない国もある。まあ、日本には石油も出ないから、税金という形で国民から金を集めなければ国の運営はできないから、そういう意味では仕方ないが、税金とは取って当然と思ってはならない。
 そりゃあ、みんなが、この社会を作ったのは自分たちで、この社会を運営するのも自分たちである、と思える社会なら、税金を出すのは当たり前だが、我々は突然生まれてきたらすでに社会があり、自分のものであるかどうか分からない社会のために税金を納めるのが義務だといわれているわけで、これはなかなか納得がいかないものである。
 特に、そうやって納めた税金が、訳のわからない使い方をされると呆然とする。地方の景気高揚のためにと、今年はプレミアム商品券があちこちの自治体で出るが、そのプレミア分は国税でまかなわれる。これ、ょうひかくだいの美名を掲げた、究極のばらまき政策に過ぎないと思うが、あなたはどう思う?
 どうして小学校は30人学級じゃなきゃダメなんだろうね。私たちが子どものころは、1クラス55人〜60人だった。それでも、みんな育ってきた。いま60人学級に戻せば、教育予算は減らすことができるはずである。そもそも少人数学級がいいという根拠は何処にあるんだろう?


 あなが、そんな話が気に入ったの?

 「だったら、一度呑みませんか? 私、夜は基本的に暇ですから、連絡を下さい」

 と名刺を渡した。

 「ああ、どうも。申し訳ないのですが、我々は名刺を持っていないのです」

 初めて知ったが、税務官とは名刺を持たぬ人々らしい。

 で、彼は私が渡した名刺を引っ張り出して

 「呑みましょう」

 と電話をしてくるだろうか?
 しばらく待ってみることにする。
 来年、税金をまけてくれるのなら、御馳走してもいいですぜ!



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