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 2015年3月13日 禿げ

 朝から皮膚科に行ってきた。例の円形脱毛症である。

 発症が発覚したのは、確か2ヶ月近く前のことだ。行きつけの理髪店で、

 「あれ、安堂さん! ここ、毛がないよ!!」

 と素っ頓狂な声を聴いたのが自覚の始まりであった。

 「円形脱毛症? ま、それだったらいずれ生えるから」

 と悠長に構え、

 「毛がなくなる? いいじゃん! 俺なんか、見かけで生きてるわけではないし、見かけで生きられる歳でもないし」

 と悠然としていたのだが、1ヶ月後、再び理髪店を訪れると

 「あ、大きくなってる」

 何故に、私の円形脱毛症が進むことが気になるのか知らないが、とにかく、私担当の彼女はそういった。ひょっとして、俺の禿が広がるのを喜んでいるのか?

 それでも、私は動かなかった。円形脱毛症。いずれは再びふさふさと毛が生える。何故に焦らねばならん?

 という固い意志は、だが、本当はそれほど固くなかったのかも知れない。1週間ほど前、

 「お父さん、ちょっと頭を下げてみて。うん、見えるよ、それ。髪の毛の流し方を考えた方がいいかも知れない」

 という妻女殿の言葉にもろくも崩れ去った。

 「なぬ?! 禿が見える?」

 私は毛が多い方である。従って、直径1pほどの禿ができようと、ふさふさした髪で覆えば人の目に触れない。そう思っていた。
 いや、手で触ると、なにやらそのあたりの頭髪が、陥没しているようにも思え、

 「ホントはやばい?」

 と思わぬでもなかったが、そう思う自分を押さえつけてきた。

 「いいか、俺は本当の禿ではない。この程度の禿で焦ったら、本当の禿はどうすりゃいいんだ? やっぱ、ばれることを覚悟しながらでもカツラをかぶるのか? それはないでしょう! 人間、自然が一番よ」

 その決意が、妻女殿の一言で何ともあっさりと崩れ去った。私とはそのようなあやふやな人間らしい。

 「俺、医者に行くわ」

 という流れで今日を迎えた。

 
 「どうされました?」

 「いや、実は、その、このあたりに、円形脱毛症ができてしまってですね」


 皮膚科の女医さんとの対話、普通は診察と言うのだろうが、それはこのように始まった。

 「ああ、そうですか。ちょっと頭を下げて見せて下さい」

 美女と覚しき(というのは、彼女、いつもマスクをかけていらっしゃるので、美女かどうかの判断がつかないのである。ひょっとしたら、松島みどり並みのとんでもない出っ歯かも知れないし)医師に、私の禿げ頭とまではいかないが、頭の禿げた部分をさらす。嬉しいことではない。美人女医さんに前立腺の診察をしてもらったあの時ほどではないが。

 診察は思いの外早くすんだ。

 「もう止まってますね。周りの毛を引っ張っても抜けませんから。でもね、この部分はいま、毛を作るのをお休みしている状態ですから、そう、また髪の毛を作るまでに3ヶ月から6ヶ月ぐらいかかると思いますよ」

 ん? ということは、3ヶ月から半年、我が頭の一部には毛がないということ?

 「それは、髪の毛工場の集団サボタージュですな。けしからん。であれば、雇用者側としては一刻も早く就労命令を出さねばなりませんね」

 女医さんがキョトンとした顔をした。どうやら、冗談が通じるタイプではないらしい。脇目もふらぬガリ勉で医学部に進んだか。

 「あ、御免なさい。つまり、なにか、少しでも早く毛が生えてくるような薬はないかと思いましてね」

 毛はえ薬か何かは知らぬが、液体の薬を処方してもらって戻ってきた。自宅に着くなり、患部に薬を振りかけたのはいうまでもない。


 昨日、統一地方選挙の第一弾、県知事選と県議選の投開票があった。結果を見ると、投票所に足を運んだのは有権者の半数にも満たない。その中で相対的に多い票を得た方々が、

 「私知事!」

 「県議に再選されまして」


 ということになった。
 神奈川県知事選の場合、投票率は40%。ということは、有権者の21%が支持すれば、神奈川県を様々な局面で代表する神奈川県知事になれるということだ。でも、21%で代表?

 新聞やテレビは様々なつまらぬ解釈を垂れ流している。だが、ひとつとして

 「これは民主主義の終焉である。代議制民主主義の基板はなくなった」

 と指摘するところはない。
 私の目には、有権者の半数以上が投票せず、わずか21%の支持で知事になれるシステムは、

 「投票によって代表者を選ぶ」

 から、政治に民意が反映されるという民主主義の本来とは大きな齟齬があると思えるのだが、どうしてメディアは基本的に目を向けないのだろう?

 ねえ、政治って、民主主義って、いったい何なんだ?



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