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 2015年5月15日 努力

 11日月曜日朝。
 いつもなら、起き抜けに血圧を測定し、ブルーレイ・レコーダーが前日のうちに録画した番組の不要部分をカットする作業を続け、終われば1週間先の録画を予約する。
 そこまですんで、新聞に目を通していると、

 「食べれます」

 と妻女殿が声をかける。朝食の用意ができたということだ。正確には「食べられます」というべきところだが、そのような建設的な指摘をすれば、直ちに鉄のカーテンが降りることは火を見るより明らかである。妻女殿は被凝り高き人なのだ。私は、火中の栗を拾う蛮勇を持ち合わせていない。

 食事を済ませ、読み残していた新聞に目を通し、歯を磨いてひげを剃る。そして着替えだ。

 こうして、今日という1日に立ち向かう準備ができた私は事務室に向かう。ここで仕事の準備をするのである。
 と書くと、

 「ボス。いまやってるのが準備なの?」

 啓樹や瑛汰の声が聞こえそうだ。
 うん、正直に書こう。事務室に向かった私は、まずパソコンゲームに取り組む。まだ寝ぼけている能細胞を活性化させて仕事に立ち向かう知性を取り戻すためである。
 というのは、いかにも苦しい言い訳か?

 いずれにしろ、しばらくの時を事務室で過ごす。となると、やっぱり音楽がほしい。
 だが11日、わが事務室に設置されたネットワークオーディオはウンともスンとも音を出してくれなかった。仕方なく、愛用のMacと光ケーブルで接続したDACから音楽を流す。だが、ダメなのだ。黒コンピュータとDACの組み合わせから出て来るふくよかな音を聞いてしまった耳には、何ともザラザラした味気ない音に聞こえる。
 ああ、いい音で音楽を楽しみたい!

 本来であれば、もう仕事を始めている時間である。だが、この心境で仕事なんてできるか? いい音で奏でられる音楽なしで、仕事をしようという気になるか?

 「まだ約束まで時間がある」

 自分にそう言い聞かせながら、やっぱり修復作業に立ち向かってしまうのだ。わが黒コンピュータが正常に作動する姿を見たい!


 昨夜を思い出す。
 さて、何故に黒コンピュータは正常に作動しないのか?

 コンピュータとは、ハードとソフトの組み合わせである。掌に載るほど小さい黒コンピュータも原理は同じはずである。で、電子部品の組み合わせでで来ているハードに過剰電流が流れるなどの事故があったのなら、こいつが壊れることもあるだろう。だが、先週末からの状況を思い起こせば、そのような事故が発生したとは考えにくい。
 だとすれば、壊れているのはソフトのはずである。そのソフトを蓄積しているのはmicroSDカードである。

 「やっぱり、ちゃんと焼けていないのに違いない」

 とは、前夜、生まれて初めて、カードに「Volumio1.55PI.img」というヤツを焼く体験をした私の出した結論であった。
 であれば、ちゃんと焼かねばならない。だけど、教えてもらった手順はちゃんと踏んだ。なのに焼けていないとすれば、どうしたらいい?

 まず、家電量販店に走って、新しいmicroSDカードを2枚買ってきた。これに「Volumio1.55PI.img」を焼こうという算段である。
 頭に残っている焼き方は頼りにならない。ために、ネットで探した。しかし、ネットも万能ではない。特に、私のように、この世界にまったくなじみがない人間には、使うに使えない情報ばかりである。何しろ前夜、ネット頼りに「焼く」作業を繰り返し、成果を出せなかった私である。他のページを見ても、焼けるかどうかはおぼつかないではないか。

 だが、おぼつかないままでは、事務室のネットワークプレーヤーは動かないママなのだ。とにかく、前に進まねばならない。
 同じ作業を何度も繰り返した。約束の時間が来ると外に出かけ、夜は飲み会の約束があったので呑みに出かけ、火曜日も朝から作業に取り組んだ。

 「もっと、素人にも分かりやすい表現で『焼く』作業を解説したページはないか?」

 と探し回ったのはいうまでもない。
 やっと火曜日の夜になって、ネットで

 「これだ!」

 というページに行き当たった。

 http://qiita.com/key/items/699611bb199f63a230d1

 である。ApplePi-BakerというMac用のソフトがあり、これなら簡単に焼けるというのである。使わない手はない。

 すぐに。その最新版をダウンロードした。Version1.6である。落ちてきたソフトを立ち上げて、焼く作業に入ろうとした。すると……。

 Admin ID

 なるものを求められた。何だ、それ?

 これもネットで調べ、administrator IDであるらしいことが分かった。私のMacに何か特殊な作業をさせようとするとき、

 「俺が所有者、全権者なんだから、いう通りにしろ」

 と命令するためのIDである。そう解釈して、いつも打ち込んでいるIDを打ち込んだ。これで焼き込みが始まるはずだ。ところが

 Error

 ちょいと待ってくれ。俺、間違ったか? 今度はちゃんと……、でも、やっぱりErrorである。

 「ということは、俺の解釈が間違っている?」

 今度は、MacAdmin IDとは何かをネットで調べる。そして、それを忘れたときのリセットの仕方も知った。

 ここまで来たら、リセットまで進むしかないではないか? 
 インストールDVDを取り出し、新しいAdmin ID(らしきもの)をセットした。さあ、これでいいだろう、と作業に戻る。ところが、これでも

 Error

 なのだ。
 おいおい、俺にどうしろっていうのよ?!

 が、簡便ソフトが使えないとなれば、やっぱり日曜日と同じように、ターミナルからコマンドを打ち込むしかない。だけどこれは、何度も失敗しているからなあ。

 と思いつつやってみる。だが、やっぱり黒コンピュータは正常には動かない。

 うーん。
 あ、そうだ。そういえば、ApplePi-Bakerには古いバージョンもあった。ひょっとしたら、それならAdmin IDなんて求めないのではないか?

 と思いついて、Version1.5.1なるものをダウンロード、作業を始めた。
 おお、やった、やった! Admin IDなんていらないじゃないか。ほら、順調に作業が進んで焼き始めたぜ!

 と喚起したのもつかの間だった。作業が途中で止まるのだ。調べると、この古いApplePi-Bakerフリーズしているのである。何で? と訝りつつ、もういちどやってみる。やっぱりフリーズする。

 「どうなってんだよ!」

 こうなれば、やっぱり日曜日の夜と同じく、ターミナルからコマンドを打ち込んで、という作業に戻らざるを得ない。で、やっていたら、大変なことになった。

 ターミナルが動かなくなったのである。
 記憶によると、ターミナルを立ち上げるとウインドウが出てきて、最初に2行ほど記述があった。いま、私のターミナルは空白である。もとあった2行がどこかに消えてしまった。何度立ち上げ直しても同じである。それだけならいいのだが、コマンドを打ち込んでも動かない。

 「おいおい、最後の頼みの綱であるターミナルを壊しちゃった?」

 八方ふさがりとは、このような事態をいう。さて、このようなときにはどうしたらいいのか。これもネットで調べる。出てきた対処療法を試してみる。だが、書かれている通りにやってもターミナルは元に戻らないし、それではとダウンロードした、ターミナルに代わるターミナルソフトも動かない。

 「えーい、だったらMacOSを書き換えちゃえ」

 OSの上書きは最後の手段だ。だが、このようなときに躊躇は許されない。インストールDVDをセットし、OSの上書き作業に入った。
 ところが、である。

 Macは、勝手にインストール作業を中断してしまった。DVDを取り出すと、はあ、目で見えるほどの傷がついている。なるほど。だからインストールできないのか。

 八方ふさがりが十方ふさがりになった。預金通帳の残高の数字が増えるのは快感だが、こんな数字が増えてもクソの役にも立たない。
 こうして私は、microSDカードに、黒コンピュータが求めるソフトを焼き付ける作業をする手段をすべて失った。

 「くそ! せっかくI君がつくってくれたヤツだが、これでは役に立たない。ゴミ箱にたたき込むか?」

 怒り半分、諦め半分である。正常に作動すれば素晴らしい音を聞かせてくれるのに、正常に作動しない。

 「やっぱり、俺程度の知識しかないと、市販のネットワークプレーヤーを買うしかないのか? パイオニアのA-70は10万円以上するぞ。あれを買うのか?」

 いや、諦めるのは簡単である。そう、いざとなったらゴミ箱にたたき込めばいいが、最後の最後まで努力は続けるべきではないか?
 では、どうする?

 私は、Mac OSの購入に踏み切った。手持ちのDVDは傷がついて使い物にならない。であれば、新しく買ってOSを上書きしてみよう。そうすればターミナルも復活するに違いない。復活したら、またターミナルにコマンドを打ち込んで作業を継続するしかないではないか。

 AmazonOSを探して発注した。
 さて、OSが届いて、ターミナルが正常に戻ったとして、microSDカードへの焼き込みはうまくできるのか? ひょっとしたら無駄な抵抗ではないのか?
 だが、努力を重ねずして暗黒の未来を思い描くのは愚人の常である。とにかく、やるしかないのだ。

 「今日はこれまで」

 と布団に入ったのは、12日火曜日の深夜であった。
 我が事務室には、素晴らしい音色の音楽はまだ流れない。


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