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 2016年7月7日 地獄への扉

 夏。桐生で、車のドアは地獄へのドアである。
 今日、桐生の最高気温、37.6℃。炎天下に1時間放置した車の中は60℃を超えていたはずである。ベルトに下げたタオルで(これ、最近、私の夏のファッションです)で汗を拭きながら運転の一日。

 桐生での引っ越し先探しが難航している。

 8月いっぱいで、まる42年奉職した会社を去る。いまの住まいは会社が借りている事務所県住宅だから8月末までに明け渡さねばならない。
 それだけなら、荷物をまとめて横浜の自宅に戻ればいいのだが、桐生でできた同士たちの

 「戻るな。桐生に骨を埋めよ」

 というかなり強引な引き止め工作に巻き込まれ、自宅のある横浜に戻るのではなく、市内での引っ越し先探しを強いられた。
 その、私を引き止める同士の1人に不動産屋さんがあるものだから、彼に任せっきりにしていたところ、なかなかな適当な物件が出てこないのである。

 そりゃあそうだ、といえないこともない。
 なにしろ、いまの住まいは延べ床面積150uをこえる広さを誇る4LDKである。しかも、1階は床暖房が入って快適な冬の生活を支える。これに匹敵する家など、簡単に見つかるはずはない。

 「まあ、床暖房は諦めるよ。電気カーペットでも買うさ」

 といってあるのだが、それだけ条件を緩めても見つからない。

 昨日は3軒見た。戸建てが1戸、マンションが2戸である。
 戸建ては狭い。2階建てで90u強。多少の狭さは我慢するとしても、我が家の50インチのテレビを置く場所がない。それもないのだから、オーディオシステムなど、倉庫に放り込まざるをえない。テレビも映画も音楽もない生活。

 「これ、×

 マンション。1戸は60u前後の3DK

 「ここでどうやって住むの?」

 「いや、沢山の人がこの間取りで住んでるんですよ」

 「ごめん。だけど、私の横浜の家は140uほどあるの。それにあわせて家具があるから、とてもじゃないから入りきらない」


 2戸目のマンションは90u前後の4LDK。総面積が限られているから一つ一つの部屋は狭い。だが間取りのレイアウトが上手いのか、これなら何とか入りそう。元々は分譲マンションだそうで、使われている部材はかなり高級だ。これにするか?

 「で、家賃は?」

 「部屋だけで月13万円、駐車場を入れると15万円です」

 「あ、×


 あとで聞けば、このマンション、ベランダで煙草を吸うのは禁止である。喫煙は部屋の中だけ。臭いがほかの住居に忍び込むためだという。でも、室内で吸ったタバコの煙だって換気扇で屋外に出る。それだってほかの部屋に忍び込むのではないか?
 訳のわからないルールを持つマンションだ。

 ねえ、タバコの臭いを嫌う君たち。君たちの車から吐き出される排ガスの臭い、私は嫌いなんだが。だから排ガスを出す車は、マンションの敷地内でエンジンをかけないでほしいのだが。そんなルールを作ってくれませんか?


 今日は戸建てを見に行った。100u弱の平屋建てである。平屋は使い勝手がいい。究極のバリアフリーといえる。高齢者に優しいつくりだ。写真を見ると、広々とした玄関、浴槽も洒落ていて、ダイニングキッチンもなかなか好ましい。隣のリビングには囲炉裏まである。

 「これ、洒落てるね」

 待てよ。ふと気になった。100uはないのに、この玄関の広さ、ダイニングキッチン、リビングの快適そうなしつらえ。これほど贅沢すると、部屋数を極端に少なくするほかないんじゃない?

 「まあ、とりあえず見に行ってみましょうよ」

 促されて地獄への扉を開き、ハンドルを持って現地へ。
 なかなか洒脱な一戸建てである。ドアも洒落ているし、玄関は広々としている。ふむ、感じがいい。

 玄関から真っ直ぐ歩くと畳敷きの8畳間。隣が、何やら納戸風の部屋。引き返して玄関から右に入るとダイニングキッチンとリビング。

 「えっ、これだけ?」

 これでは、妻女殿の寝室しかない。隣の納戸風の部屋を片付けて私の寝室軒事務室にするのはいいとして、ん? 子供たちが遊びに来たらどこに寝せる? 玄関に布団を敷くのか?

 「やっぱ、これも×

 いまの住まいからの退去まで、あと1ヶ月半ばかり。おい、俺、どこかに住めるのか?

 「今週末、もう1軒出る可能性があります。週明けまで待ってください」

 あのO氏に話をしたら

 「俺も聞いといてみるよ。あの人は煎らなく鉈家を持ってたよなあ。あ、彼の弟さんの家もいま空き家だ」

 O氏も、私を引き止める1人である。
 遅れに遅れた新居探しがやっと佳境には入った。でも、どうしても見つからない時はどうするのだろう? 俺たち夫婦、いまの家を追い出されて路上生活者になるのか?

 さて、私は無事に桐生の住人であり続けることが出来るのだろうか?
 佳境に入った新居探しに動き回りながら、不安が膨らむ私である。



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