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 2016年12月26日 音出し

 さて、いよいよ自作DACの音を出す段階となった。週末の3連休をあてた。

 「何を言う。音は出たのではなかったか?」

 さような疑念をお持ちの方もいらっしゃろう。そう、Mさん方では立派に音が出た。だが、私は私の技術を信用しない者である。なにしろ、こいつは精密機械なのだ。Mさん方から我が家まで運んだ車の振動で、どこかの接点が外れているかも知れないではないか。Mさん方で音が出たのは、私の白昼夢であったかも知れないではないか。
 我が家のクリスキットのシステムに接続して音が出て、初めて自作DACは完成品になるのである。

 こいつをクリスキットシステムに接続するには、まず、友人のI君がつくってくれたDACをシステムから取り外さねばならない。プラグを抜き、Raspberry Piと繋いでいる同軸ケーブルを抜き、アンプとの接続を切る。そこに、自作のDACをそのまま繋ぐ。
 よし、繋いだぞ。

 「ん?」

 ない。置き場所がない。私が作ったテレビ・オーディオラックはすでに機器で満杯である。ために、I君作のDACはテレビの横にわずかにできた隙間に設置していた。そこに置こうと思ったのだが、自作の方は横幅が広い。DACの基板と電源基板を横に並べたためである。前から見ればフロントパネルは木製、加えて横幅もあるから安定感があり、見た目もよいのだが、この隙間には置けない。

 「どうする?」

 やむなく、90度回転させて縦長に置くことにした。こうすると、スイッチ類は横に動かすしかなく、しかもフロントパネルは本体より幅広に作ったから、何とも安定感がない。が、そうしか置けないとなれば、それもやむを得ない。そのうち、ちゃんとした置き場所を考えよう。

 接続を確認して、アンプ、DACの電源を入れる。ラズパイはアンプの電源に繋いであるから、自動的に電源が入る。

 ラズパイは、起動に時間がかかるコンピューターである。化粧品の箱程度の大きさしかないのに(化粧品にもいろいろサイズがあることは知っていますが、ほかに例えを思いつかなかったので……)、デスクトップコンピューターを立ち上げる以上の時間がかかる。何故だろう? と考えないこともないのだが、デジタル回路に弱い私に解答が導き出せるはずはない。私が使っているのはラズパイ2。すでに3が出ているが、起動時間が早くなったという話は聞かない。いずれは瞬時に起動するコンピューターになってくれることを期待するしかない。

 ラズパイの準備が整うと、チャラリン、という感じの音楽が流れる。そこでiPadでラズパイに接続、再生する音源を選んでタッチする。今回はBob Dylanを選んだ。

 あ、Bob Dylanが出たからついでに。
 Bob Dylanのノーベル賞、あなたはどう思いました? 私は一言、

 「カッコ悪い!」

 いや、賞を受けたことが格好悪いのではない。受賞者がDylanに決まったあとのDylanの反応が、何ともいただけなかった。
 まず、無視。そして、アプローチの拒絶。これはいい。選考委員会がDylanを受賞者に選ぶのは選考委員会の勝手である。勝手に選んでおいて、

 「なんで電話にも出てくれないんだ?!」

 とわめくのも選考委員会の勝手である。だが、無視を決め込んで電話にも出ないのはDylanの勝手ではないか。この勝負は互角というより、Dylanの勝ちである。
 そこまでは、私はDylanを高く評価した。

 だが、Dylanがそのような態度を取ったため、周りはあれこれの推測を繰り返した。その中で私は

 「ほう、受賞を拒否するのか」

 と解釈した。

 私が知るだけでも、哲学者のサルトルはノーベル文学賞の受賞を拒否した。理由までは知らないが、Dylanがノーベル賞受賞を拒否しても、最初ではない。
 The Beatlesは女王にもらった勲章を後になって変換した。
 数学界の難題といわれたポアンカレ予想を証明したペレルマンは、フィールズ賞の受賞を拒否した。フィールズ賞の賞金は100万ドル。ノーベル賞とほぼ同額である。この人、数学者だからきっとお金持ちではない。それなのに、もらわなかったのである。ウィキペディアによれば、

 「自分の証明が正しければ賞は必要ない」

 と語ったのだそうだ。カッコいい! 潔い姿勢ではないか。

 ましてやDylanさんはお金持ちである。使いきれないほどのお金をお持ちの方である。加えて、これまで既存の社会に対する違和感を言葉にしてきた詩人である。

 「おいおい、俺の音楽があんたたちに分かるのかよ。あんたたちに分かるようでは、俺の音楽もいまいちだな」

 程度のことをいってノーベル賞を拒否するのではないかと思っていた。期待もあった、と思う。

 ああ、それなのにそれなのに。1ヶ月ほどしたら

 「賞を受けるかって? もちろんだよ

 だと?!
 沈黙を続けたのは

 「言葉を失っていた」


 だと?!

 ああ、見損なったね、Dylan。あんた、そんじょそこいらの口先だけの親爺たちと同じじゃないの?


 話がすっかり横道にそれた。
 それでも、自作DACの我が家における音出しの最初の音源はDylanであった。私、彼のファンなのか、ファンではないのか。自分でも判断が付かないのである。

 それはそれとして、Dylanの曲にタッチした。
 おお、出た! 明瞭な音で出た。だが、待てよ。何だか違う……。あれまあ、右の音が左から、左の音が右から出てるぜ! これ、結線を間違えたな!

 アンプのボリュームを絞って結線をやりなおし、再びボリュームを上げた。うん、今度は正常だ!

 I君がつくってくれたDACは、FN1242というDACチップが使ってある。ネットで見ると極めて音質の評価が高い国産のチップで、一時期は自作派がこぞってこのチップでそれぞれのDACを作ったらしい。ところが製造が中止され、いまでは手に入らない幻のDACチップになってしまった。

 私が作ったのはESS9018K2Mという、確か米国製のDACチップを使っている。しばらく前までは「最高!」の折り紙付きで語られていたESS9018というチップの簡易版といわれる。

 で、DACチップが違うと、音は違うのかどうか。それが肝心な点なのだが、今の段階では分からない。なぜなら、2台のDACを即座に切り替えて聞くことができないからである。入れ替えようと思えば、すべてを接続し直さなければならない。どれほど急いでも5分はかかる。5分もたてば、それまで聞いていた音の印象は薄れてしまい、新しく鳴り始めた音楽と比較するのは無理なのである。

 それでも、不確かな印象を語るとすれば、自作DACの方が音の切れ込みが鋭くなったような気がする。良くいえば、音がピュアになった。悪く表現すれば細身になった。

 まあ、これはきちんと比較する環境がないままでの、いい加減な評価である。あまりあてにしないで頂きたい。幸い、我が家にはもう一台ラズパイがある。だから、これを使ってI君作DACをラズパイとアンプ、NASに接続すれば両方から同じ音楽を流すことができる。アンプのセレクターを使えば瞬時に切り替えることができるので、聞き比べの正確さもアップする。
 そのうちやってみようと思う。しばらくお待ち願いたい。


 ついでといっては何だが、自作DACの評価を試みたので、一時激賞したパーカーの5thインジェニュイティについて一言。
 極めて気に入って買い求めた万年筆である。年賀状に一言ずつ書き添えるのに、この万年筆を使ったのはいうまでもない。書いたのは150枚ほど。1枚について本の2,3行ずつである。そして、作業を始める前に、書くと何だかかすれるようになっていたので、替え芯を取り替えた。
 それだけの下準備をして始めたのに、残りが10枚ほどになると、何とまたかすれ始めたではないか。

 「おい、たいして字は書いてないぞ。1枚当たり50文字としても7000文字程度ではないか。原稿用紙にしたら18枚目の半ば。それでインクが切れる? この替え芯、1本600円以上出したんだぜ!」

 そう、この万年筆、コンセプトは素晴らしいのだが、インクの減りが半端ではない。これ、ひょっとして、質の悪い替え芯を買ってしまったのか? いや、だけど、替え芯だってパーカー製だよな。
 私はAmazonで、5thインジェニュイティの替え芯を探し出し、ユーザーの評価を読んでみた。すると、仲間が沢山いた。実に書きやすくていい万年筆なのだが、インクの持ちが悪すぎる。パーカーに電話をしたが、相手にしてもらえなかった……。
 そうか、5thインジェニュイティにはそんな大欠陥があったのか。7000文字書いて650円だと、10文字で1円だもんなあ。それ、高いわ。高すぎる!

 いや、私が余りにもパーカーを誉めあげたので、影響されて購入される方いらっしゃったら一大事と思い、現状をご報告した。
 インクのコストにめげずに書き味を楽しみたい方はお買い上げ頂いても失望はないと思う。ただ、この万年筆の構造上、書き味は替え芯による。Amazonの書き込みによると、まとめて安くなっている買え芯は、途中で芯先が割れてくるなどのレポートもあるので、そのあたりをご注意願いたい。
 そして、いくら何でもそのコストはいただけないとお考えになる私と同じ感性の方々は、少なくとも替え芯の問題が解決されるまでは購入を控えられるようご注意申し上げる。

 私はというと、5本まとめ買いした替え芯が3本残っている。この3本は使うが、これが切れたらどうするか。現在思案中である。



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