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 2017年3月27日 car dance

 高速道路上で車が踊るシーンを初めて見た。昨夕のことである。

 昨日は夫婦揃って歯の修理の日であった。かかりつけというか、主治医というか、修理してくれるのは次女の旦那。相模原で開業している。よって朝9時過ぎに桐生を出て、調子が今ひとつの愛車を横浜・三沢のディーラーで診断してもらい、昼食を済ませて相模原へ向かった。

 ちなみに、私の車の診断は次のように下った。
 とりあえずコンピューターは狂っていない。エンジンの一部に調子が悪い記録が残っているが、これは前回の不具合の時に前橋のディーラーが手がけた修理が完全ではなかった可能性もあり、修理の領収書(修理内容が書かれている)を見たいとのことだった。
 5月になれば車検を受けなければならない。5月7日に車券の予約を入れ、その時に領収書を持っていくことにした。それまで普通に走っていても問題はなかろうとのことだった。

 担当の営業マンは

 「だからね、新車にしましょうよ。いまなら思い切った値引きが出来ますから」

 と私に迫ったが、

 No!

 と一言の元に却下。いま買い換えるのなら新しくなった523dだが、こいつ、ズータイがでかすぎて横浜の自宅の車庫には入りきらず、また町中のタワーパーキングにも納まりきらないのでやめにすると伝えた。
 あ、これ、値段も高い。

 「3シリーズの新型を早く出しなさい!」

 ま、そういう経過があり、歯の修理をしてもらい、午後3時過ぎに相模原を出た我々であった。

 相模原から桐生に戻るには、圏央道に乗り、関越道に入って北関東自動車道に乗り換える。約2時間のドライブである。そして、高速道路上における車の踊りを目撃したのは、間もなく桐生に到着しようという北関東自動車道であった。

 追い越し車線を120km/時ほどの速度で走っていたと思う。その時、眼の片隅に不思議な光景が写った。ワゴン車が道路左側の側壁に頭から突っ込んだのである。

 これは念のためだが、ひとこと、車を運転する時のご注意を。
 目の焦点を合わせないことである。どこかをまじまじと見てはいけない。前を行く車に視線を釘付けにするなんてのは最悪である。どこか1点に焦点を合わせるのではなく、ボーッと前を見ていなければならない。
 そうした方が視野が広がるからである。車を安全に運転するには出来るだけ視野を広くし、広範囲の情報を取り込まねばならない。1点を見つめると、そのほかが見えなくなる。自分の車の安全を脅かすのは前の車だけとは限らない。脇道から自転車が出て来るかも知れないし、左を走っていた車が突然右にハンドルを切って割り込むかも知れない。自分は交通マナー(規則ではない、念のため)を守って走っていても、ほかの車や人が守るとは限らない。1点を見つめていると、視野の隅で起きていることが見えなくなるのである。
 どこにも焦点を合わせず、ただボーッと前を見ていれば、視野の片隅で起きた異変も感じ取ることが出来る。感じ取ったら、いったい何が起きたのかを知るために、その現場に焦点を合わせればよい。

 昨夕起きたのは、そんなことであった。いつものようにボーッと前を見ながら走っていた私の視野の隅で、何か変なことが起きた。そこに焦点を合わせてみると、白いワゴン車が道路左側の側壁に突っ込んでいたのである。

 その車が何故に側壁に向かって走らねばならなかったのか、その運転手が持っていたかも知れない事情は、私には分からない。
 何しろ、私の前方を走っていたのだから、私の車と同じ程度の速度は出ていたはずだ。その速度で壁に向かって走ったらどうなるか。追い越し車線から側壁まで10mもなかろう。だとすると、ブレーキを力一杯踏んだところで、側壁の前で車が止まってくれるとは思えない。激突必至である。車は少なくとも前部が大破するだろうし、場合によっては乗員が痛い思いもする。人の好き好きはそれぞれではある。が、好きこのんで車を壊し、臨んで痛い思いをしようという好き者がいるのかどうか。
 とあれこれ考え、小雨が降っていたので、ひょっとしたらツルツルになるまで使ってきたタイヤが濡れた路面でスリップしたのかも知れないと想像するだけである。

 ま、それはそれとして。
 前方で事故。間に車が1,2台いたから、目測で約150mほど離れていたろうか。このような緊急事に、私は何をしたらよかろう? と考える間もなく、私は急ブレーキを踏んでいた。運転歴47年の蓄積が生んだ自然な反応である。

 急ブレーキで車の速度を落としながら、目は側壁に激突したワゴン車を追った。
 側壁に激突したワゴン車はそこで動きを止めることはなかった。すぐに方向を変えたのである。つまり、側壁にはじき飛ばされたわけだ。はじき飛ばされたワゴン車はほぼ180°向きを変え、今度は中央分離帯に設置されたガードレールに向かった。

 「おいおい、そっちに行ったらまたぶつかるぜ」

 と口にする間もなく、ワゴン車は中央分離帯のガードレールに、今度も激突した。初速を120km/時としても、側壁に激突した時点で運動エネルギーはかなり吸収されたはずなのだが、それでも相当な速度でガードレールにぶつかったのである。

 2度ぶつかれば、運動エネルギーは相当に消費されているはずである。また、ぶつかられたガードレールは変形することで運動エネルギーのかなりの部分を吸収してくれるはずである。
 それでもワゴン車ははじき飛ばされた。再び180°近く方向を変えたワゴン車は、再度側壁に突進した。

 何か、高速道路を舞台に華やかなダンスをご披露した。ところが、興奮のあまり調子に乗りすぎて3度も壁にぶつかっちゃったダンサーのようであった。
 そうか、まだあまりダンスが上達していなかったのね。

 以上が瞬時に起きた。速度を落とした私の車が事故現場に近づいた時、右側に見えるガードレールは大きくねじ曲がり、衝突エネルギーの大きさを示していた。そしてワゴン車は再び左側の側壁にぶつかり、流石に運動エネルギーを消耗し尽くしたのか、反対向き、つまり本来の進行方向とは逆に車首を向けて止まっていた。窓越しに覗くと、作業員分の兄ちゃんが運転席に座り、動いていた。

 「えーっ、あんなにぶつかったのに、何かピンピンしているみたいだな」

 と助手席の妻女殿に申し上げた。

 「ホント、あんなにぶつかって、凄いものね」

 なのが凄いのかは不明だが、以上が妻女殿のコメントである。
 いずれにしろ、死者やけが人がいないのなら、いや怪我ぐらいはしていたかも知れないが運転者が動けるのなら、私がしなければならないことはここにはない。そのまま車を走らせ、すぐに太田・薮塚インターで高速道路を降りた私であった。

 にしても、である。あれで、よく単独の事故で済んだものだ。
 高速道路で1台の車が、突然横に吹っ飛び、左から右、右から左と往復運動をする。そこに次の車が通りかかっていれば、当然第2の事故になり、事故車が2台になれば第3,第4の事故につながっていても決して不思議ではない。ということは、私の車が巻き込まれたことだって充分あり得たのである。
 運がよかった、というべきか。事故の起こし方が上手かったね、とワゴン車の運転手を褒めそやすべきか。
 それとも、

 「巻き込んでいてくれたら保険金が取れて、最近調子がおかしい我が愛車を買い換えることが出来たのに」

 と悔やむべきか。あ、そうすりゃ、痛い思いをしていたかも知れないなあ。これ、保険金だけ頂いて痛い思いをせずにすむテクニックってないものか?
 立場や人生観で受け止め方はそれぞれであろう?

 にしても、だ。あの速度で、あのぶつかり方である。ビルにでもぶつかっていたら中の人間がつぶれてしまうほど、車はペチャンコになっていたはずである。それなのに、ワゴン車はそれほど壊れてはいなかった。側壁やガードレールが上手に衝撃を逃がしたのであろう。技術とは、これこそ本当に凄いものである。

 高速道路上で華麗に舞い踊る車。珍しいものを見せて頂いたが、華麗なショーは1度だけでよい。普通に何事なく車が流れている高速道路のありがたさを噛みしめる私であった。



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